蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ピーター・イエーツ監督「ブリット」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.55

1968年という思い出深い年に、私がアメリカでいっとう好きな懐かしい坂の街サンフランシスコを、ずだん、ズドンとすっとばすスティーヴ・マックイーンの刑事ブリット。何回見てもハラハラドキドキします。しかし何回見てもどういう話だかよく分からない。ただただブリットの壮烈な刑事魂にあきれかえるのみ。

あとの話はどうでもいいようなものだけど、やはり印象に残るのは悪代官役の上院議員ロバート・ボーンでしょう。この人は1974年の「タワーリング・インフェルノ」でもやはり議員役で出ていたが、その時はそういう悪役ではなく、悪人を取り押さえようとしてゴンドラから墜落死してしまう気の毒な役でした。

それからマックイーンの恋人役のジャクリン・ビセットもこの頃は元気でいろいろ浮名を流していましたが、今頃はどこでどうしているのだろう。幸福な晩年を迎えて欲しいものである。

それにしても50歳で死んじまったマックイーンは若死にだった。生きていれば80歳だというが、中寿のマックの姿は誰も見たくないだろう。彼の恋人はいまでも田舎の「ラストチャンス牧場」に住んでいるらしい。


屁の如き指揮者どもが今日もわれらの魂を汚辱している 茫洋