蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

家が沈む~「これでも詩かよ」第80番

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ある晴れた日に第220回

 

 

リビングを歩くたんびに

あっちもペコペコ こっちもペコペコ

 

ああ 家が沈む 家が沈む 

築三十五年のわが家が 毎日毎晩どんどん沈む

 

いったいどうしてこんなことになったのか

おそらくはミサワホームの広告のせいだ

 

「天井の高い家だと子供はのびのび育つ」というので、

「天井を高くしてくれえ」と頼んだ私が莫迦だった

 

確かに業者は天井を高くしてくれたのだが、

そのぶん床を低くしていたのであった

 

ああ しらなんだ しらなんだ

ついさきごろまでは しらなんだ

 

ここ鎌倉は東京より空気が冷たい

海と山に囲まれて春夏秋冬湿気がひどい

 

そいつが我が家の低い床に忍び込み

朝昼晩と材木を侵した

 

床の上に張りめぐらしたフローリングの薄板を

朝な夕なにシュウシュウシュウと吹きつけた

 

ああ しらなんだ しらなんだ

ついさきごろまではしらなんだ

 

フローリングの上にあるのは何百何千の本とかCD

DⅤDやビデオに加えてレコード、カセット、レーザーディスク

 

全部で何トンあるかしらないが、物凄い重量に懸命に耐える薄板の上を

ときおり耕君の巨体がフロア狭しと駆け回る

 

リビングを歩くたんびに

あっちもペコペコ こっちもペコペコ

 

ああ 家が沈む 家が沈む 

築三十五年のわが家が 毎日毎晩どんどん沈む

 

 

 

 

なにゆえに本体価格で表示する消費税など無きがごとくに 蝶人