蝶人戯画録

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ジョン・フォード監督の「長い灰色の線」をみて

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bowyow cine-archives vol.643

 

ヘンリーフォンダが主演する南太平洋の日本軍との激戦の話かと思っていたのだが、出てきたのはタイロン・パワーがアメリカNY州のウエストポイントにある陸軍士官学校の名物教官になって長く活躍するという物語であった。

 

題名の「長い灰色の線」というのは陸軍士官学校の制服がグレイなので、彼らが行進すると長い灰色の列になり、またこの言葉はアイゼンハワーやニミッツなどを生んだウエストポイントの長い歴史を意味しているのだろう。

 

「西点」であろうが横須賀であろうが宇和島であろうが私は国が集団で人殺しをするための組織である軍隊やその予行演習をする兵学校は大嫌いである。

 

わが国でもこういう軍隊制度がそのまま教育の現場に持ち込まれ、それが工場や企業の生産現場に適用されて上意下達の規律人間の大量生産に役立っている。

 

彼らはこの映画でもそうだが、指揮官の号令一下右に左に見事な行進振りを見せる。しかし私は昔からこういう運動神経が鈍くて非常に苦労してきた人間なのである。

 

物ごころがついて幼稚園に入れられ、その最初の日のお遊戯でスキップしろと命じられたがいくら頑張ってもできなかったことが、わが生涯最初のつまずきとなり、これがトラウマとなって中学校や高校時代の体育ではフォークダンスができず、私はいつもひとりいじけて運動場の隅で砂地に○を描いていた。

 

だからもしこれらの学校に入れられたら最低の劣等生として将官や上級生にしごかれ、、同級生からも爪はじきになるだろうし、これがもし日本や米国でなく北朝鮮なら私はマスゲームができない非国民として真っ先に処刑されていただろう。クワバラ、クワバラ。

 

そんな次第であるから、私がいくら名匠ジョン・フォードと主人公の愛妻を演じるモーリン・オハラが大好きでもこの映画を喜びとともに見物することはできなかったのである。

 

 

なにゆえに除染除染と騒ぐのか放射能を移転するに過ぎないのに 蝶人