蝶人戯画録

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カール・ズズケ&ヴァルター・オルベルツの「モーツアルトのヴァイオリンソナタ集」を聴いて

 

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音楽千夜一夜第321回

 

私がモーツアルトのヴァイオリンソナタの演奏で求めるのは、夢のような儚さとこの世を遠く離脱したようなある種のはるかさである。

 

そうなるとやはりグリュミオーハスキルのデユオにとどめをさすが、この独逸人二人による演奏も捨てがたい。

 

ヴァイオリンソナタとはいうものの、むしろ主役はピアノのほうにあるので、オルベルツの明るく、平明で、そのくせいっさいの虚飾を取り払った、誠実で質朴で淡々とした演奏が、かえって作曲者の孤独な内面を的確にとらえているような、そんな感じがするのである。

 

正月は終わったが、この冬の寒さに耐えるためにときどき聴き返したいと思う。

 

 

悲しさは疾走なんかしないいつも私の部屋の片隅で佇んでいる 蝶人