蝶人戯画録

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ダリル・F・ザナック製作の「史上最大の作戦」をみて

 

 

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.613

 

 

ご存知連合軍のノルマンディー上陸作戦を描いた一大ドキュメンタリー風歴史映画である。

 

この作品はなんと4人の映画監督を使っているが、それらを一手に束ねている実質的な監督は、あのジョン・フォードも泣かせて黙らせた剛腕プロデューサーのダリル・F・ザナックであることはいうまでもない。

 

この作戦を扱った映画はその後続々登場するわけであるが、たとえば「プライベート・ベンジャミン」の冷徹なリアリズムと比べると、ジョン・ウエインやへンリー・フォンダ、ロバート・ミッチャムなどの登場人物をみてもわかるように、近代戦争とはいってもどこか一抹の野趣と浪漫を湛えた巨大な西部劇のようにみられないこともない。

 

ロバート・ミッチャムが指揮するオマハビーチの塹壕奪取にしても乃木将軍の203高地の悲惨な人肉地獄に比べればまるでピクニックのようなものだ。

 

映画の中ほどで川沿いの道路を進軍する連合軍の兵士を捕えたカメラが、彼らが橋を渡って高台にあるカジノを占拠するドイツ軍に向かって丘を登ってゆくところを延々とヘリコプターによる空中移動撮影でとらえた長回しがあるが、私はこれほど見事なロングショットは見たことがありません。

 

それにしても当時の私たちの父祖は三国同盟の一員であったわけだから、当然連合国の上陸が成功しては困るわけなので、彼らになり代わって私の大好きなクルト・ユルゲンスの視線でこの大作を眺めてみたのだが、残念ながらやはり連合軍が打った大ばくちは大成功を収めてしまうのだった。

 

 

 

なにゆえにあの警官は逮捕しなかったのか国会議事堂めざし突入せしわれを 蝶人

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