蝶人戯画録

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アルフレッド・ヒッチコック監督の「逃走迷路」をみて

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.617

 

 

原題は仏語でサボタージュ。敵国のスパイが自国に紛れ込んでいるのでそれをやっつけるというキナ臭いお話ですが、にもかかわらず映画の自由さ、楽しさ、面白さが120%発揮されたヒッチの傑作です。

 

 ヒッチの演出力の凄さは再生中の映像をどこで止めてもスチールとして完成していることで、これは古来多くの名匠、巨匠と共通する最大の特徴です。

 

 最後にNYに戻ってブルックリン造船所、はては自由の女神の右腕のてっぺんでの格闘まで出てくるサービスとサスペンスのきわまりが物凄い。これはヒッチ自身がかれの想像世界に殉じているのですね。

 

ナチの「悪い奴」、ヒロインの盲目のオジサンという「底抜けに善い人間」など色々な人間が出てくるがヒーローを助けるかどうかを巡ってサーカスの芸人の意見が割れ、それを「民主的に」多数決で決めるというのも面白い。

 

 

なにゆえにどこで止めてもナイスショットなのかヒッチコックの映像の凄さよ 蝶人