蝶人戯画録

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Les 50 plus grands operas du monndeを聞いて


音楽千夜一夜第103回

フランスのデッカレーベルから発売されている、世界の代表的なオペラの演奏を収めた100枚組のCDセットをようやく聞き終わりました。

こんな重厚長大な代物をどうして買ったのかと尋ねられたら、1枚200円以下の安さに目がくらんだからだと答える愚かな私ですが、その内容はといえば非常に聞きごたえのある名曲の名演奏揃いでした。

No music no lifeならぬ、「音楽のない人生なんて過誤と疲労と流刑がいっぱいでっせ」という哲学者ニーチエのエピグラムを巻頭にちりばめた本全集シリーズでは、1607年にモンテヴェルディが作曲したオルフェオから始まって、1936年にフランコ・アルファーノによって作曲された「シラノ・ド・ベルジュラック」という珍曲まで、作曲年代順に並べられた50曲のオペラをよりどりみどりで聞きまくりながら過去400年の歴史をたどることができます。

モーツアルトでは「ドン・ジョヴァンニ」、「後宮からの脱出」、「フィガロの結婚」、「魔笛」、ヴェルディでは「リゴレット」、「オテロ」、「椿姫」、「トロヴァトーレ」、「仮面舞踏会」、プッチーニは「トゥーランドット」、「トスカ」、「マノンレスコー」、「蝶々夫人」、「ラ・ボエーム」といった按配で主要作品を網羅していますが、カタラーニの「ワリー」やマスネーの「タイース」、レオンカバッロの「道化師」、ラベルの「子供と魔法」、さらにはシェーンベルクの「期待」、ベルクの「ヴォツエック」といった現代曲もきちんと押さえられています。
44歳の若さで亡くなったエットーレ・バスティアーニのバリトンをヴェルディ作品でどっさり楽しめるのもこのアンソロジーの魅力のひとつでしょう。


♪中刷りの白恨めしき電車かな 茫洋