蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2013年如月蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日に 第122回 

 

 

 

恥ずかしそうに咲いていました「スーパースタア」という名の赤きバラ

 

45年営業したる横須賀ヤジマレコード閉店のお知らせ

 

驚いた、驚いた、そこにいたのはテン・リトル・インディアンズ

 

欲しかった輸入盤CDに高値つくあな憎たらし安倍蚤糞

 

1万円の赤いデジカメが壊れたので9千円の緑のに買い替えました

 

北国では毎日雪など降っている滑った転んだと大騒ぎするな東京

 

お馴染みの百円野菜売り切れて辛口大根一本残る

 

大根は葉っぱのままで売ってくれとっても栄養があるんだから

 

三人で豆撒きながら叫びました「鬼は外福は内悪いの悪いの全部飛んでけ」

 

鬼は外豆撒きながら思うこと携帯スマホの無き世に戻りたい

 

思いのたけ綴りし葉書出したれどポストに降りし雪に消えたり

 

肉親を戦で亡くさず夫子無き女が説くよ徴兵制

 

毎日の生活苦に追われているので世界苦などに遊ぶ暇が無い

 

髭それば君はうっとり目を閉じる父に出来るのはこれくらいかな

 

激しく手を叩き頭を殴りまた手を叩いているあれは父である私を怒っているのか

 

エイヤッとばかり切り倒したり三十年待ってもオオムラサキを呼べぬ

 

絶望の虚妄なること希望に相同じいと呟きつつ林檎喰う

 

病院で2時間待たされ年に2回は内視鏡検査せよといわれ380円払いたり

 

外貌は心の美醜を現さずすべての人は通り過ぎて行く

 

懐かしの穀象虫よいま何処隈なく探さむ米櫃の中

 

ただひとり建国の日に国旗掲げる町内会長

 

おたまじゃくしはカエルの子私の孫でもあるわいな

 

ボッカッチョとは俺のことかとボッカチヨいい 

 

たつき無き家に降り積む夜の雪

 

寒椿謙譲の美徳死語となる

 

 

夕陽が沈む

 

ギンギン、ギラギラ、夕陽が沈む。

海の向こう、水平線の彼方に真っ赤な太陽が沈む。

と思ったのは目の錯覚で、じつは私たちが沈んでいるのだった。

 

ドンドン、グングン、沈んで行くのは私たち。

依然としてさっぱり沈まない太陽は、ギンギン、ギラギラ、どこか遠い別の国を照らしている。

 

ドンドン、グングン、沈んで行くのは私たち。

まるで地球の引力にまっすぐ引かれるように、柔らかい地表をぶち破ってマグマが燃え盛るマンガン層に向かって、ドンドン、グングン、沈んで行くのは私たち。

 

さあこうなると、いくら泣いても笑ってももう止まらない、止められない。ドンドン、グングン、沈んで行くだけ。

 

でも私たちはこうなることをずいぶん昔から分かっていたはずだ。

と、そう思いつつ、身も心までも小気味いいまでに落下していく。

 

ギンギン、ギラギラ、夕陽が沈む。

海の向こう、水平線の彼方に真っ赤な太陽が沈む。

 

冬椿誰ひとり読まぬブログかな 蝶人