蝶人戯画録

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ジョージ・ロイ・ヒル監督の「スティング」を見て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.397

 

いっぱい喰わされた詐欺師が、もっと大物の諸悪の根源みたいな元締めをいっぱい喰わせるという一大策略映画。非常に良く出来たプロットと演出で最後まで楽しませてくれるが、よーく考えると、はてなという問題もある。

 

 例えばこの詐欺師は知らずに大物の金をちょろまかしてしまう。それを知った大物から命を狙われ、詐欺師の大先輩である相棒を殺されてしまう。それでこの大物を罠に掛けて仕返しをしよう、というのがこの映画の発端になるのだが、そもそも悪いのは主人公の詐欺師チームなのである。

 

 それを逆恨みして友人知人を巻きこんで大がかりな仕返しを企画、実行していくというのは動機としてはちょいと不純なのではなかろうか。

 

 それからFBIが登場し、主人公を追跡している刑事を巧みに陥れるシーンが映画のキモになっているのだが、このFBIがじつは偽者で詐欺師一味の味方であるということを登場人物にも観客にも明かさないままで話を進行させているのはかなりルール違反なので、採点からは減点しなければならない。

 

懐かしの穀象虫よいま何処隈なく探さむ米櫃の中 蝶人