蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

今井正監督の「喜劇にっぽんのおばあちゃん」を観て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.402

 

これだけ芸達者な老人を動員すればさぞや演出が大変だったろうと察せられるが、なかなかどうして名匠のメガホンは鮮やかな切れ味を見せる。

 

主役はミヤコ蝶々北林谷栄で、圧倒的な名演を見せている。ヒステリックな嫁とうつけ者の息子に嫌気がさした蝶々、養老院での集団生活に居場所を失った谷栄が浅草で知り合い、若い店員十朱幸代の温情に一瞬は救われながらも2人揃って疾走する車輪の前に身を晒すシーンは救いが無い。

 

木村功の化粧品セールスマンの命も儚い。結局2人は死にきれず、蝶々は谷栄のいる養老院に向かうのだが、果たして何事もなく元の鞘に収まるのだろうか。それでも昔の老人問題は「喜劇」で済んだが、今のそれは地獄のような悲劇の種で満ち満ちている。

 

 

 

ここは地獄か天国か日本全国ジジババばかりみんな揃って楢山音頭 蝶人