蝶人戯画録

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フランク・キャプラ監督の「素晴らしき哉 人生!」を見て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.401

 

主役のジェームズ・スチュアートが熱血正義漢ぶりを発揮して町内の顔役と体を張って闘うのだが、ふとしたことから(この叔父が銀行で大金を顔役に拾われてしまう、というご都合主義は良くない)会社倒産、一家離散の危機に直面する。

 

この絶体絶命のピンチに神の助けを求めたスチュアートの祈りに応えて登場した「2線級の天使」クラレンスの活躍こそこの映画の見どころ。絶望の淵に沈んでおのれの存在理由を疑うスチュアートに、「もしこの世に生まれていなかったら?」こういう事態が起こるという映像を見せて回心させ、「私たちはただ生きているだけでじゅうぶんに生の意味はあるのだ」と再確認させるシーンは感動的ですらある。

 

物語はさらに続き、思いがけない助っ人たちの登場で万事めでたしめでたしで幕を下ろすのだが、こういう出来過ぎたエピローグは本当は蛇足なのかもしれない。

 

ここに露呈された映像作家としてのキャプラのサービス精神の過剰さは、例えば彼の反戦映画ならぬ第2次大戦における反日独伊枢軸国キャンペーン愛国映画の熱血ぶりを見ても明らかである。

 

 

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