蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

美神たちの黄昏 第四夜~西暦2014年弥生蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日に第218

 

 

さよなら台風十八号!と耕君は叫びました。

 

商人のささやかなる策略はサン・キュー・パーと値決めすること

 

次々に散歩ボランティアが名乗り出て被災地犬次郎は町内の人気者

 

考えてみれば我らの平平凡凡たる人生のすべてが空前絶後の一期一会

 

三ヶ月引き取る者なき粗大ゴミ誰かと市役所の我慢比べ

 

長き夏ようやく果てた証しとて一尾百六十八円のサンマ賞味す

 

祟りなど微塵も気にせず曼珠沙華根絶やしにする不届き者め

 

町内の誰も行かないレストランを「うまい」「オイシイ」と持ち上げるテレビ

 

皿運ぶチャプリンの如く強かにヴェルディのアリアを持ち上ぐジェームズ・レヴァイン

 

ニコチンの塊のごとき男ありてわれの隣で毒素を放つ

 

一月ぶんの新聞が一個のトイレットペーパーになりその一切れで尻を拭いてる

 

六十代で夫婦生活が復活したと触れまわるあれらの誇大広告を取り締まれすぐに

 

国家てふ臭い鍋物に蓋をすれば味噌も糞も見えなくなる

 

誰のためのどんな国かはさておいて上御一人に拝跪する奴婢

 

ただアハアハと莫迦笑いいずれあんたの生命を奪うレバイアサンとも知らず

 

金曜の夜に少しく濁る我が家の風呂施設から戻りし耕君ゆえに

 

三菱鉛筆UNI2Bならでは紡げない思想があるとは摩訶不思議

 

我はいつも我のことのみ考えているのにいつも我らのことのみ考えている妻

 

物みながどんどん値段を上げてゆく安倍自民党に感謝したまえ

 

選者から選ばれなかった我が歌も私にとっては大切な歌

 

二階家の二つ並んだ六畳の南の部屋の端っこが毎晩私が夢見る畳

 

デパートへ行けば次々欲しきもの後期資本主義はしたたかなるかな

 

新築のホテルの水は金気あり宴会は老舗ホテルにせよと言いし総務部

 

現世で鳴くらんかはたまた隠り世にて鳴くらむかまだ鳴いている蝉の声

 

小なりといえども魁偉なり紋黄揚羽目前を過ぐ

 

 

 

なにゆえにまずモザールを愛さぬかバッハを好みアルバン・ベルク聴くとふ岡井隆 蝶人