蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

美神たちの黄昏 第五夜~西暦2014年弥生蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日に第219

 

鎌倉の八幡様の大通り恋人の手を引き関取が行く

 

親よりも年長のガードマンを従えて御成通りの銀行ウーマン

 

町角の小さきイタリアレストランを応援したいが駐車場がない

 

鎌倉の小町通りの遺跡発掘現場身の丈掘れば鎌倉時代

 

午後二時の太陽の光に照らされて眼下に広がる御家人の館

 

美輪明宏7000加山雄三6800菅原洋一6000円チケット料金の違いは微妙

 

なにやら取り返しのつかないことをしたような大きな忘れ物をしたような気になりませんか電車の扉がするすると仕舞ったとき

 

なんとなくこの歳になるまで生きてきて縁なきものはセクシー、ギャラクシー、ベン・ケーシー

 

「チチンプイプイ痛イノ痛イノ飛ンデユケ」ト母サンハ魔法ヲカケマシタ

 

世界ジュウノ悪イ鬼ドモ退治スルソレガ桃太郎ノ仕事ナノデス

 

海ハヒロイナオオキイナ一日ニ三百トンノ汚染水ヲ黙ッテ呑ンデル

 

ミエコサンノテアテデグングンドンドンナオッテユク

 

ミエコサンハドンナフクデモニアウケドムラサキイロガトリワケニアウ

 

さらさらとゆびよりおちるすなよりもはかなきものはいのちなりけり

 

「お父さん、僕おうちが出来てうれしいよ」ケアホームに入った息子がいうのだが

 

おはようと小さく呼べばおはようと同じ音量で答えるうちの耕君

 

その時の気分によってお父さんと呼んだりまことさんと呼んだりするうちの耕君

 

耕君がグルーチョ・マルクスのように歩いてる腰を二つに折ってギクシャクと

 

消去法で行けばほとんどゼロしかし私には妻子と歌がある

 

さなきだに無信心のわれなるが篤信の心なきバッハ受難曲の演奏に怒り覚えて

 

われ山に向かいて眼を上げたれど神はいまさず白雲に烏

 

電子書籍で読むランボオには私の髪の毛もふけも鼻糞も挟まっていないだろう

 

わが投石を呵々大笑する台湾リス疾く雷落として懲罰せよ天上のゼウス

 

そのかみの一大ゲバルトの寸前に手渡されしは黄色いレモン

 

蟷螂なれば誰ひとり顧る者もなく路上放置轢死体累々

 

スタンダールの『赤と黒』を読んだこともない若者を前に情熱恋愛を語っているわたし

 

天皇を元首にしたい政党に清き一票入れた君たち

 

列島の全海岸に人が出て沖合に向かい泳ぎ出す日

 

真昼野の大樹の下に歩み入りミンミンゼミの号泣を聞く

 

 

なにゆえにS席のみ売れ残りたるコンサートなにゆえC席をもっと増やさぬ 蝶人