蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

「鎌倉宮」を拝しながら


茫洋物見遊山記第26回&鎌倉ちょっと不思議な物語第218回


鎌倉宮」は、承久3年1209年に建立されたいまはなき東光寺の跡に明治2年に建立された新造の神社ですが、これも廃仏毀釈の変種かもしれませんね。この神社にはどういう因縁だか毎年新年に一個人という資格で「正式参拝」しているのですが、そこで聞かされる神主のくだらない講話には辟易しています。

 宗教者にとってこの種の精神講話は必須の布教手段であって、私はこれまでキリスト教と仏教とこの神道というの3つの系統の講師のレクチャーを耳にしてきたことになりますが、その順番で内容がおそまつ君になるような気がしています。

 靖国神社といい鎌倉宮といい現代史に無知で不勉強なために落ち目の神道勢にあって、私がゆいいつ期待しているのが、最近ННKを退職して神主に転向された神戸大震災時のアナウンサーとして有名な宮田氏で、いつかは彼の精神講話を聞いてみたいと思っています。

閑話休題。

さて「鎌倉廃寺事典」によれば、東光寺の前身が建久2年に頼朝が建てた薬師堂であるとする「吾妻鏡」の記述は誤りで、これは近くの永福寺の伽藍の一部であったそうですが、このために現在の大塔宮の一帯は薬師堂谷と呼ばれるようになりました。

東光寺のもっとも著名な事績は、このお寺に幽閉されていた後醍醐天皇の皇子である護良親王が、足利直義の命令で殺されたことでしょう。「太平記」には彼が淵辺某の刀の鋒を口にくわえて激しく抵抗したけれど、ついに首切られて果てたことが生々しく記述されております。

護良親王の墓はこの神社にもありますが、じっさいの生首が葬られているのは浄妙寺の首塚で、かつて作家の高橋和巳夫妻がそのすぐそばの洋館に住んでいました。

首飛んで君が魂魄いずくにや 茫洋