蝶人戯画録

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クリント・イーストウッド監督・主演映画「トゥルークライム」を見る


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.29
 
1999年にクリント・イーストウッドが監督・主演した映画「トゥルークライム」を見ました。アンドリュー・クラヴァン原作のサスペンス小説「True Crime」を20世紀フォックスの大プロデューサー、ダリル・ザナックの息子リチャード・ザナックが製作した中級の佳作です。

あらすじを書くのが面倒くさいので、おなじみウキペデイアから引用すると、スティーブ・エベレット(イーストウッド)はかつては敏腕新聞記者として鳴らしていましたが、飲酒と女性問題で今ではすっかり閑職に追いやられています。
ある夜、若い同僚のミシェルが交通事故で急死したため、翌日、エベレットはミシェルの仕事を引き継ぐことになりました。それはその日死刑が執行されることになっている殺人犯フランク・ビーチャムの最後のインタビュー取材をすることでした。事件現場を訪れてみて、目撃者の証言に違和感を抱いたエベレットは急遽事件の洗い直しを始めますが、そのときすでに、死刑執行まで残り12時間を切っていたのです…。

予想通り我らがスーパーマンイーストウッドはたった半日で万難を排して事件の真相に迫ります。真犯人を突き止めたのみならず唯一の証人であるその母親をオンボロ中古車に乗せて加州知事邸宅に急行、すでに毒液を注入されていた無実の死刑囚の奇跡的救出に成功するというハラハラドキドキのサスペンスドラマですが、想定内の展開とはいえなかなか楽しませてくれます。

なお「本当の罪」という原題は、無実の死刑囚を救おうと刑務所に向かった東森記者が、死刑囚の妻から「あなたはどうして死刑になる日にここへ来たの。今日まで何をしていたの?」と詰問され、言葉を失うシーンから採られているようです。

クレジットの最後に流れる女性ボーカルが、都会の孤独を切々と歌いあげて泣かせます。


♪年年に知らぬこと多く現れ出でてよくも考えずみなほうりなげる 茫洋