蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

「デ・キリコ展」をみて、あるいは「キリコのタンゴ」

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ある晴れた日に第268回&茫洋物見遊山記第159回

 

 

福音書的な静物、謎めいた憂愁、遠い友からの挨拶、

剣闘士の休息、白い馬、谷間の家具、

剣闘士の戦闘、イーザの肖像、古代的なヌード

 

ピカソが畏れた。ダリが憧れた。」

というのがこの展覧会のキャッチフレーズだけど、これって昔私が考えた

ミロより優しく、ゴッホより激しく、ピカソより純真!」という惹句に似てる。

 

ネメシス、決闘、女性の頭部のある風景、

戦士、後悔するミノタウロスエーゲ海岸の古代の馬、

2つの幹と生い茂った葉、眠るアガメムノン、彫像のあるイタリア広場、

 

今から40年ほど前、私が神奈川県の横浜市以外の地域の自閉症児親の会を発足させ、

子供たちの作品の展覧会が開催されたときのキャッチだけれど、

主催者のパナソニックさんも、あんまり進歩していないんだね。

 

吟遊詩人、噴水と邸宅のある形而上的室内画、ビスケットのある形而上的室内、

ユピテルの頭部のある形而上的構図、古代的な純愛の詩、慰める人

不安を与えるミューズたち、マントの人物、2頭のフリギア馬

 

キリコといえば、形而上的絵画なんだそうだ。

孤独と沈黙と憂愁、なんだそうだ。

しかし代表作の「通りの憂愁と神秘」は出品されていないようだ。

 

植民地のマネキン人形ヘクトルとアンドロマケ、慰めのアンティゴネ

2つの仮面、マラトンの戦士たち、ユピテルの手と9人のミューズたち

考古学者たち、オレテスとピラデス、ユピテルへの奉納

 

むかし「巴里の細道」の絵で有名な橋本清一画伯のアイデア

「通りの憂愁と神秘」を動画にしたようなテレビCMを作ったことがある。

婦人服のコマーシャルだった。

 

燃え尽きた太陽のあるイタリア広場、神秘的な広場、太陽の寺院

神秘的な水浴場、散策からの到着、鴨のいる神秘的な水浴場

エプドメロスの帰還、ヒッポカンポス、橋の上の戦闘

 

黄昏の街で輪まわしをする少女のシルエットが横町に消えると

しばらくして成熟した大人の女性がこちらに向かってくるというコンテ

上野耕路ミニマル・ミュージックが、どこかで輪まわしとシンクロしてたな。

 

柱の近くの小さな馬、幻想的な素描、邸宅の上の人物

邸宅の上で歌う2人のテノール歌手、黒い宝、後肢で立ちあがった馬

神秘的な動物の頭部、巫女たち、オデュッセウスの帰還

 

汐留のミュージアムを出ると、秋の小雨がはらはらと舞い落ちてきた。

なんとなく有楽町へ向かいながら、私は低いバリトンでタンゴを歌った。

♪キリコ、キリコ、霧子よ、お前はどこへ消えたんだ。

 

 

キリコ、キリコ、霧子デ・キリコ いまでも死ぬほどお前を愛してる 蝶人

 

    なお本展は来る12月26日まで同館にて開催中。