蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

作曲家の肖像~「これでも詩かよ」第126番

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ある晴れた日に第285回

 

 フリュートをくるくる回しながら

「これ1本でどんなBGMでも生録音致します。どうぞなんなりとご用命ください」

と云って、真鍋理一郎氏は破顔一笑した。

 

 東京文化会館に行くと、武満徹夫妻の姿をよく見かけた。

 作曲家は普通の大人より小さかったが、妻はそれにちょうど見合う大きさで

 二人並ぶと内裏雛のようだった。

 

「どうぞ」と云って、一柳彗氏は、出来たての譜面を見せてくれた。

それはパウル・クレーの絵のように、美しかった。

音符はなかった。

 

 

  朝な夕な立ちんぼうにて仕事する販売業はつらきものかな 蝶人