蝶人戯画録

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トヨタの自称高級車「エスクァイア」の広告をみて

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広告戯評第20回&バガテル-そんな私のここだけの話op.195

 

 

少しく旧聞に属するが旧臘の新聞やテレビで見かけた我が国、いな世界を代表する自動車メーカーの広告である。

 

そこには赤地に不気味な黒衣のバットマンが登場しており、「日本にも、私も、ここからだ」とか「この国には今、目標がある。さて、あなたは、どうだろう」などという御大層なキャッチフレーズが掲げてあった。

 

ボデイコピーを見ると「この国が再び走り出そうとしている今、より充実した人生を求める男たちは増えるはずだ。きっと誰もが自分のアクセルを踏み始めるはずだ。ESQIREはそんな男たちと共に走り、彼らを鼓舞する存在になろうと思う」そうだが、これってまるで安倍蚤糞一味の演説そのものではないか。

 

「この国には今、目標がある」なぞと勝手に妄想しているのは一部の国権的右翼政党だけだし、その目標だって戦後民主主義を冒涜して戦前回帰を目指そうとするきわめていかがわしいものだ。

 

 「さて、あなたは、どうだろう」なんて凄まれても、満額回答の出たトヨタとかその株主たちとは裏腹に、さっぱり景気回復の実感などない国民の大多数はシラケルばかりだ。

 

 憲法を蹂躙して特定国家秘密法案で民草を威圧し、自衛隊を自在に海外派兵しようとする連中さながら、「日本にも、私も、ここからだ」などと発破をかけられても、「日本も、私も、もうおしまいだ」としか答えられない。

 

 どの企業が商売の相手にするのもこの国の民草であれば、その企業がときの政府や一部の政党の政治的見解をなぞるような広告を発信するのは、いかがなものであろうか。

 

 この広告を眺めていると、その背後にはトヨタ電通→安倍蚤糞の一連の伏流すら浮かび上がってくるようだ。

 

 ときに1台300万円の車って、高級車なの?

 

 

   幻想の共同体の暗がりで国家国家と喚く者ども 蝶人