蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

アレハンドロ・アメナーバル監督の「アレクサンドリア」をみて

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.877

 

 

 紀元4世紀頃、遅れてエジプトにやってきたキリスト教徒の反知性的、反文明的な無知と残虐さにスポットライトを当てた珍しい映画です。

 

 ヒロインは古代社会の七不思議として全世界に君臨したアレクサンドリア図書館で天文学、数学、新プラトン哲学を講じたヒュパティアで、現在からみてもまっとうな科学者、哲学者ですが、キリスト教徒たちはこれを異教徒、魔女と断じて虐殺してしまう。そのさまは、さながら「偽イスラム国」の暴徒のごとし。

 

 今でこそ世界の支配宗教としてのさばっているキリスト教ですが、ではその教義が、彼らが唾棄するユダヤ教イスラム教、その他仏教やら神道やら彼らが難ずる「邪教」に比較してどれほど立派かというと、公平に見てどっこいどっこいのものでしょう。

 

 いろいろな仏典やコーランなどを読んでみると、旧約、新訳聖書に勝るとも劣らぬ立派なことが書かれています。実際にやっていることは別にしても。

 

 私も家族がおおかたがキリスト教だし、あんまり悪口はいいたかないけど、歳をとるにつれて他者や他の宗教に非妥協的・排他的・暴力的な態度をとる一神教というものにどんどん嫌気がさしてきたずら。

 

 こういう映画をみていると、宗旨が異なるという理由で世界中で異教徒殺戮戦争を行っている「純粋無垢で熱烈な宗教家」がいかに危険な存在であるかがよく分かるずら。

 

 宗教も政治も、あんまり教義やイデオロギーに糞真面目にならんほうが、平和に長生きできるのではないでしょうか。

 

 

   戦好きの猪八戒が履くといふ十の切れ目なきパンスト破りて捨てよ 蝶人