蝶人戯画録

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ロマン・ポランスキー監督の「おとなのけんか」をみて

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.910

 

 子供が喧嘩して一方が他方を傷つけたので、その両親が被害者の両親を自宅に訪ねるところから映画は始まる。はじめはお互いに紳士的友好的な雰囲気だったが、もののはずみで子供の喧嘩はどこへやら、大人同士がお互いに本性をむき出しにして怒鳴ったり泣いたりするのを、笑ったり、考えさせられたりしながら鑑賞する大人の映画なり。

 

 

 子供の喧嘩には大人はあまりかかわらないのが普通だと思うが、この夫婦たち、特に双方の妻は積極的にかかわろうとするのが興味深い。間に弁護士などを介在させず、直接双方で話し合ったり解決しようとする姿勢は、まさに直截民主主義の実践なりい。

 

 ために2組の夫婦は最初はユニットを単位にして対立していたはずが、お互いに夫婦喧嘩して、その結果お互いの同性同士の連合軍が誕生したりする。争い、自己主張するうちに、夫婦という「対幻想関係」が崩れ去って4つの個人がばらばらに一室に立ちすくむ様こそ、現代の普遍的な人間関係というものかもしれない。

 

 面白い、されど恐ろしい映画をポランスキーは作った。

 

 

       栗饅頭も名物弁当も消えし故郷 蝶人