蝶人戯画録

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是枝裕和監督の「奇跡」をみて

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.911

 

 父母の離婚で福岡と鹿児島に別々に住んでいる兄弟が、九州新幹線の開業日に登りと下りがすれ違う瞬間に願いをすれば叶えられるという噂を信じて実行するおはなしを映画にしたもので、いかにもスポンサーのJRらしい企画である。

 

 こう粗筋を読まされただけで詰まんないと思う人も多いだろうが、まあそんな感じに終ってしまっている。

 

 是枝は出演者の子供に脚本を渡さず現場で「自然に」演出しているそうだが、観ているとそのカットも背後に控えている監督やスタッフの存在があからさまに「映っている」のが気になって物語の中に入っていくことができない「不自然さ」があり、これでは映画としての「奇跡」など起こるわけがない。

 

 子役の主役の兄弟はいいキャラクターだと思うが、小津が子供を撮ったような“正しい”演出で臨んでほしいと思うのである。

    三本の矢で一億を奮い立たせいざや進まん戦への道 蝶人