蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2015年長月蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日に 第333回 

 

 

海岸に漂える三歳の男児の映像が世界を動かす

 

コンクリートの森戸橋に幣下がり神社の祭り近付きにけり

 

今朝もまた隣の犬が啼いているわんわんわんわんワンワンワワン

 

鎌倉の市の花は竜胆だというけれど市内のどこでも見たことがない

 

アジサイのごとき男女うごめくシネマかな

 

しらなんだこの節はクァルテットと書くのかカルテットじゃなくて

 

30代の太った男が全裸で歩いてた9月3日午後3時半浄明寺郵便局辺り

 

グルグルと上下左右に回ってる古稀の男の胃検診サーカス

 

大便検査せんものと焦っているのだが捉え損ねて沈んでる立派なウンチ

 

「あっ、はあー」「変わっちまった」「ってやんでぃ!」「困っちゃうね」「うんっぐっく」

 

「サーバーが古い」といわれて国立劇場の歌舞伎が予約できないサーバーが古いとは

 

官憲にこと上げしない民衆の怠惰と不作為が作家を殺す

 

イチローがでないマーリンズの試合くらい退屈なものはない 

 

「民主主義は多数決です」と軽く言うそんな男の民主主義とは何

 

大君の仰せのままに防人はホルムズ海峡の機雷獲るらし

 

うじゃうじゃと雨後に蛆虫湧くがごと巷に蠢く右翼ファシスト

 

理非を捨て数を頼みて無二無三国を破滅に追い込む者ども

 

憲法と民草の声を圧殺し戦争への道を爆走する人

 

クー・デタが決行されし翌日も帝都の暮しは何事もなく

 

三本の矢で一億を奮い立たせいざや進まん戦への道

 

震災も原発事故も九条もなかったことにする人々

 

百万言のご丁寧なご説明は不要ずら違憲戦争法案撤廃せよ

 

栗饅頭も名物弁当も消えし故郷

 

格別に優れた歌とも思えぬが常連贔屓の新聞短歌

 

口語体の短歌に混じる文語体時代遅れが突っ張ってゐる

 

病院で血圧測れば最高一五七最低九六脈拍六七なりき

 

なんとなく先逝く人が羨まし来るべき日の嵐思えば

 

さんざめく東京ドームを埋めし人みんな一人で死んで行くのだ

 

高等遊民には及ばずともせめて下等遊民で死にたいなと夢見る今日この頃

 

 

     気違ひが出刃包丁を持ち葉月尽 蝶人