蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

秋の鎌倉文学散歩

 

 

茫洋物見遊山記第192回&「鎌倉ちょっと不思議な物語」第359回

 

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 鎌倉文学館の主催で年3回行われているこの催しですが、今回は「鎌倉文士の足跡」を辿るウオーキングでした。

 

 というても行動半径は駅の周辺の近場ばかり。午前10時に裏駅の時計広場に集合してお昼前には駿河銀行前で解散という短時間ツアーなんだね。もちろん文学館の学芸員の方が用意されたテキストをもとに懇切丁寧な解説をしてくださいますので毎回勉強になります。

 

 鎌倉文士というのはキザで嫌な言葉ですが、そもそも文士というのは武士という言葉ともども古事記吾妻鏡に出ているといわれて、ちょっと驚きました。その当時は役所の事務方という意味で現在のように文学者などを意味しなかったそうですが。

 

 久米正夫、高見順川端康成などの鎌倉文士が、戦争末期に喰うに困って始めた貸本屋鎌倉文庫」は鶴岡会館付近にあり、その開設準備は小町通り若宮大路をつなぐ路地にあった「龍謄」という喫茶店で行っていたそうです。

 

 昭和20年8月17日に鎌倉養生院で肺結核で亡くなった島木健作も、その死の直前までこの「鎌倉文庫」の企画に賛同して蔵書を提供しています。

 

 ちなみにこの鎌倉養生院というのは現在の清川病院で、中原中也も昭和12年10月22日にこの病院で亡くなっているので、私は彼らを悼むべく毎年の健康診断をこの倒産寸前の由緒ある病院で行っているわけです(笑)。

 

 中也と云えば以前の日記で、最晩年に彼が長谷の玩具屋「からこや」で空気銃を買ったと書いてしまいましたが、今回のツアーでそれは下馬四つ角にあった「林家」という今は材木屋になっている百貨店で買い求めたそうです。

 

 中也はそれで八幡様の鳩を撃ったようですが、私ならさしずめそこらへんにうようよしている凶悪にして獰猛なる台湾栗鼠を撃滅したいですなあ。

 

 

   月並みにあらざるはずの歌選び新聞歌壇に投稿するなり 蝶人