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蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

市川昆監督の「細雪」をみて

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.950

 

 

 谷崎の原作に出てくる美しき女性たちの私のイメージは、この映画に出てくる俳優達とは全然違うので困ってしまう。いやこれは市川昆のセレクトだから別に困ることはないか。

 

 市川はこの映画を名家の没落と残照とエレジーとしてとらえ、悲愴な挽歌を流しながら陳腐なメロドラマとして締めくくろうとしているが、原作のトーンはそんな浅薄なものではなく、もっと前向きな姿勢で貫かれており、谷崎の眼はラストのヒロインたちが東京に出てからの奮闘努力に愛情深く注がれている。

 

 またこの映画では、全編の主題を、長女の連れ合い貞之助の次女にあんちゃんへの密かな思慕にもとめているが、これはとんでもない浅墓な勘違いずら。この谷崎の代表作のメインテーマは、「ある魅力的な女の永久に完結しない恋の遍歴の物語」であり、この長い小説は、どこまで書いても未完で終わるべき麗しくも悲しき宿命を帯びているのである。

 

 それにつけても女優達が着ている着物の、なんとどんくさいことよ。どこの衣装で誰が監修しているのか知らないが、今も昔もあんな色柄デザインで外を歩いたら、「なんちゅうダサイけったいなヤツや」とみんなが後ろ指をさしまくるに違いない。

 

 

  吉田翁が推薦されしCDを師走の銀座で需めしあの頃 蝶人