蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第31回

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西暦2016年睦月蝶人狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op.222

 

 

時の経つのも忘れて往年の名画を鑑賞していたら突然遠い地方の震度3の地震速報が一度といわず二度も三度も流され、もはや映画どころの騒ぎではなくなってリモコンでスイッチを切ってからもどこへも持って行き場のない腹立たしさにうち震える。12/25

 

どんな映画も芝居もご都合主義で作られているが、官邸が自作自演する安倍蚤糞政治ほど手前味噌のものはあるまい。12/27

 

此の世では「万物が流転する」のであって、「最終的かつ不可逆的」なるものは何ひとつ存在しない。

 

セリーヌ・ディオンが「愛の賛歌」を唄っていたが、はじめから終りまで音程が狂っていて、半音ほどずり下がっていたが、彼女って音痴なのかしら。

 

ローラとか森泉がテレビで喋っているのを見聴きしていると、この人たちは莫迦ではないかと思う時があるのだが、これは莫迦を装っているのか、それともやっぱりほんとの莫迦なのか、いったいどっちなのだろう?12/30

 

このたび北朝鮮が「水爆」を爆発させたのは、米国などから「自主権」を守るためだ、と主張している。では我が国は、なにを打ち上げてそれを獲得するのか。1/7

 

オムレツを作るためにはまず卵を割らなければならないとイヴ・シャンピに言われたので、岸恵子は「おとうと」の撮影が終わるや否やパリに飛んで行ったそうだが、うまく口説いたものだ。

 

「これは僕の蝶だ。僕のオオイチモンジだ」と田淵行雄は叫んでいます。福岡伸一

 

テレ朝「報ステ」の古舘伊知郎に続く、NHKの「クロ現」の国谷裕子キャスター、TBS「NEWS23」の岸井アンカー、の降板こそ、安倍蚤糞による露骨な言論弾圧に他ならない。1/8

 

山田美也子の案内でなかったから聴いてみたが、山田和樹指揮N響、いったいどこがいいいのかさっぱり分からん。この番組ではどの解説者も、どんな下らぬ演奏でも、いつも絶賛する。恥を知れ!1/9

 

NHK-FMの「リサイタル・ノヴァ」、いつもながら本田聖嗣の司会が煩い。新しい年になったから「弾き語りフォーユー」の小原孝と一緒に消えてもらいたいのだが。あ、その前に籾井、お前だよ、お前。1/10

 

ピエール・ブーレーズ死す90歳。実演に接したことはないが、いつも鋭いメスで患者の急所をズバズバ切開する外科医のような棒で峻厳で冷徹な音楽をやっていたが、本人はあれで楽しかったんだろうか。自作自演を聴いても私とは遂に無縁の音を奏でている「宙外の人」だった。1/11

 

どうしても安倍蚤糞をやっつけるんだという強い覚悟と冷静な戦略が無い限り、民主党をはじめとする野党は、夏の参院選に勝利できないだろう。1/12

 

鎌倉京都を新幹線で日帰りすると大人1人27160円もするんだ。びっくりぽん。高えなあ。15000円くらいかと思っていたよ。まるで浦島太郎だなあ。 1/13

 

現代短歌の改革は、1987年俵万智の「サラダ記念日」よりも一足早く、1969年の大橋巨泉の「みじかびの きゃぷりてぃとれば すぎちょびれ すぎかきすらの はっぱふみふみ」からはじまった。1/13

 

SMAPの所属事務所がどうなろうが、私の知ったことではないが、そんなことでラアラアラアラ目の色を変えて朝から晩まで騒げる人が、ある意味でじつに羨ましい。1/14

 

今朝の「天声人語」に敬愛する歌人奥村晃作氏の代表歌が紹介されていた。

「次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く」

アメリカの画家エドワード・ホッパーの代表作「ナイト・ホークス」にも通底する現代人の孤独と沈鬱が胸をうつ。1/15

 

おのが仕合わせの多くは周囲の人々の有形無形、精神的肉体的な献身と犠牲によって形作られていることを思うべきである。1/18

 

明治生まれの人が一人でも生きているうちは、明治時代は死滅していない。1/19

 

民主党の岡田選手が、左右両サイドの野党に対して本当の「政治力」を発揮して反自公統一戦線を結成しないかぎり、今度の参院選で野党は勝利できないだろう。1/20

 

「一点突破、全面展開」はかつて私たちの行き方生の作法であったが、いまやそれは悪辣非道な安倍蚤糞にとって代わられている。全国の学友諸君、いまこそ「一点突破、全面展開」を奪還せよ!なんちゃって1/21

 

エットーレ・スコラ84にしてローマの病院で死す。1930年代のムソリーニの時代のファシズムの恐怖を描いた「特別な一日」を肌に粟が生じるようなゾクリとした感覚と共思い出した。きっとあれが、もうすぐこの国にやってくるのだろう。1/21

 

世界中で激化する富の偏在。選ばれた62人の金持ちが、36億人の貧乏人と同じ額のお金を持っている。1/22

 

政局が動揺して野党がいき巻いているが、なんのことはないそれは「週刊文春」といういち週刊誌のスクープのせいであって、野党の力ではさらさらないことを肝に銘じるべきだ。1/24

 

10年振りに日本人の相撲取りが優勝したのは、じつにめでたい。次場所は琴奨菊の大活躍をまざまざと眼に焼き付けた万年駄目大関稀勢の里の奮起に期待したい。1/25

 

「地球に優しく」などとほざいていた連中も、3・11以後は次第にうなだれて口をつぐむようになり、いまでは環境もエコも忘れて白痴のように唄い踊っているようだ。1/26

 

久しぶりに「矜持」という言葉を聞いた。ほとんどの政治家にはそれがない。1/29

 

虎屋の羊羹の隣に入っていた50万円は「これは何かのお間違いでは?」と糺して受け取らない、すぐ返す、のが民草の「適正な」流儀 1/30

 

1月27日の夜、NHKのFMで聴いたセル&クリーブランド管弦楽団シューベルトの最後の交響曲は前代未聞の素晴らしい演奏だった。1965年アムステルダムコンセルトヘボウでのライブだったが、あの稀代の難曲をかくも見事に振りおおせるとは!切に再放送を望む。1/30

 

ジャック・リベット、パリに死す。87歳。最後の短編映画にはジェーン・バーキンが出演したらしいが、これでヌーヴェルヴァーグの生き残りはゴダールくらいになった。1/31

 

 

とらやのやうかんのとなりにはいつていた50まんえんはうけとらないのがてきせいなしより 蝶人

 

 

アンドリュー・バーグマン監督の「あなたに降る夢」をみて

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.978

 

 

 底ぬけのお人よし警官のニコラス・ケイジが400万ドルの宝くじに当たり、ひょんなことからその半額を「約束通り」贈呈したウエイトレスのブリジット・フォンダと結ばれる愛と奇跡の夢のような実話です。

 

 しかしコーヒー代のチップがなかったので、たまたま持っていた宝くじがもし当たったら半分分けするという約束を、妻の反対を押し切って本当に実行する人は偉いなあ。4万円ならともかく4億円の半分の2億円だよ。

 

 けたくその悪い妻をロージー・ペレスがいやらしく熱演している。

 

 

 いつの日か息子の個展を見たかったさらば「かまきん」見果てぬ夢よ 蝶人

 

なにゆえに第23回~西暦2016年睦月蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日に 第359回

 

なにゆえに急にエアコンが停まってしまうしばらくは自分を暖めているらし

 

なにゆえに子供はあんなに元気に走って騒ぐまだ誰も挫折を知らない

 

なにゆえに老人はとぼとぼ歩いてる心ゆくまで悔ゆるため

 

なにゆえに「最終的に不可逆的」んなもん地上に存在しないぞ

 

なにゆえにおいらは詩を書きすすめることができる見えぬ定型と聴こえぬリズムに導かれて

 

なにゆえに朝から晩まで水爆水爆マスコミは「大事件」ならなんでも大好き

 

なにゆえに北朝鮮はひとりで暴れる世界中の誰もがソッポを向くから

 

なにゆえに延々芸能人の孫自慢を聞かされる芸能人なら芸を見せろよ

 

なにゆえにリーマンはいちばんおいしい時間を切り売りするあんたも資本の奴隷ゆえ

 

なにゆえに自公はポスターを張り巡らせる参院選で独裁政権を確立するべく

 

なにゆえに施設長は生産性向上を目標にするうちの息子はついていけない

 

なにゆえに夫婦京都往復で5万4千円もする貧乏人にはちと高すぎるよ

 

なにゆえにまた再びのカセット人気個体は系統発生を遡る

 

なにゆえに少し歩けばヨタヨタとなるそろそろ年貢の納め時かや

 

なにゆえに式の着物にあれこれ拘る京都の人は儀礼に煩い

 

なにゆえに天気予報どおりに雪が降るたまには予報士の予報が当たるので

 

なにゆえにお前は偉そうに答弁する自分が相当偉いと思っているから

なにゆえにいち唄うたいグループが自由に解散できないこの国では誰も独立できない

 

なにゆえに同じCDを何枚も買う日に日に脳味噌が腐っていくので

 

なにゆえに62人の金持ちが36億人の貧乏人と同じお金を持っている世の中ますます不公平なので

 

なにゆえに琴奨菊豊ノ島に負けたのかまた白鵬が高笑いする

 

なにゆえに石井十次に言及する安倍ほど児童福祉にそぐわない男はいない

 

なにゆえにオオルリの仔は巣ごと盗まれたのか台湾栗鼠ならぬ人間の仕業

 

なにゆえに絶滅危惧種などと澄ましこんでいる追い込んだのは自分なのに

 

なにゆえに微かな恐怖が湧いてくるプラットフォームの先頭に立つとき

 

なにゆえにわが弟の額に石を投げしやたちまち鮮血滴り落ちしが

 

なにゆえにまつのちゃんの顔に雪つぶてを投げしや当たりしつぶてに復讐せんとて

 

なにゆえに耕君は生乾きのタオルから取り入れる独自の美学独自の秩序

 

 

なにゆえにベンチャーズは便々と弾いているあれよりほかにやることないので 蝶人

西暦2016年睦月蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日に 第358回

 

 

隣の庭にたわわに鳴れる柿ことごとく鳥たちの御馳走となる

 

耕君から「お父さん怒ったり注意したりしないでね」と云われてしまった大晦日

 

ひとつ家に四人が眠るお正月

 

正月の眠りを醒ます核実験たった一発で夜も眠れず

 

短歌雑誌で有名選者の詠草立ち読みしたがこれはすごいと思える歌なし

 

津津浦浦自公のポスター貼られたり総閉塞のこの国の冬

 

目の色を変えてラアラア叫んでる水爆水爆それがどうした

 

品性のひとかけらなきキャスターがしたり顔にて喋りに喋る

 

千代田区隼町2丁目の「光解体」てふ会社が妙に気になる

 

おめでとう!琴奨菊の初優勝やれば出来るのだな日本人も

 

火曜日の危険物ゴミに出されている黒黄まだらの巨大なバナナ 

 

なんとなく先に逝く人が羨ましいそんな時代に生きてるわれら

 

レッツダンスなどと人を踊らせ自らは唄っているだけデビッドボウイ

 

高橋の源一郎が急ぎゆく鎌倉駅の東口かな

 

海鴎ヒチコック映画の如く来襲す源氏池

 

男ではなく女でもなさそうな第三の性

 

男でもあり女でもあるような私たちの性

 

ほんたうの愛を求めてプルーストジェンダーの魔境を軽々と超ゆ

 

若者がカセットテープに夢中だとか個体は系統発生を遡る

 

大阪の心斎橋の大丸の子供服売り場で走ったあの頃

 

耕君の区分判定は4なるが5を目指して検査に行きけり

 

わたくしに内緒で国境なき医師団に3千円寄付せし妻よ隠さずともよし

 

バーキンのジーンズ姿見て入店を拒否した有楽町の仏蘭西料理屋

 

なにゆえに微かな恐怖が湧いてくるプラットフォームの先頭に立つとき

 

選ばれた62人の金持ちが36億人の貧乏人の資産と同じお金を持っているとか

 

目の前の息子の耳を眺むればその姿形の好ましきかな

 

物を売ることにまつわるさまざまな手立てはつねにいささか物悲しきかな

 

中国かバングラデシュの誰かが縫ったユニクロのシャツを着て東京行の電車に乗りこむ

 

 

     ハスキルのピアノに抱かれる冷雨哉 蝶人

     ハイドンの「五度」聴き終わり春の雪

ドナルド・キーン著作集第13巻「明治天皇〔中〕」を読んで

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照る日曇る日第840回

 

明治8年の「江華島事件と東奥巡幸」から明治28年の日清戦争の勝利までを、「明治天皇紀」をベースにしながら、内外の様々な文献を自在に引用しつつ、明治という時代の政治経済社会文明人間模様について極力冷静客観的な音吐によるキーン史観で物語っている。

 

特筆すべきは、そんな時代史でありながら筆致は無味乾燥に陥ることなく、天皇自身や皇后、宮中の側近、伊藤博文をはじめとする木戸、岩倉、三条、大久保、西郷、大隈、板垣、黒田、井上、陸奥、山県などの元維新活動家の活動が活写されていることで、天皇が時々政務に倦んだ折に最新の洋装で陸海軍の演習に嬉々として臨んだ昭憲皇太后のイメージは、さながら女帝推古のごとく鮮烈である。

 

当時の日本がどのようにして台湾を手に入れ、朝鮮を保護すると称して植民地化していったか、またその延長線上の「腰撓めの状態」でずるずると日清戦争に突入していったかは、この本を読めば手に取るように分かるが、思えば清国があれほど不用意に連戦連敗したことが、その後の日本の帝国主義的侵略の道を切り開いてしまったともいえよう。

 

けれども日清戦争における我が軍の旅順虐殺事件の暴虐ぶりは、その後の南京虐殺の先蹤ともいいうる戦慄すべきもので、個々には忠良な民草が、組織された暴力組織の指揮下では、野獣のごとき集団殺戮行為の先兵となるDNAに裏打ちされていることを雄弁に物語っている。

 

興味深いのは、あれほど屈辱的な治外法権の条約を改正を巡って国論が分裂したことで、陸奥は国是に反すると知りつつも外国人恐怖症におびえる衆議院の現行条約励行派と長年にわたって戦い続けなければならなかった。

 

真の国益とは何か、を断じることは、昔も今も難しいものである。

 

 

 選ばれた62人の金持ちが36億人の貧乏人の資産と同じお金を持っている 蝶人

 

国立劇場で「通し狂言・小春穏沖津白波」千穐楽をみて

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茫洋物見遊山記第196回

 

河竹黙阿弥生誕200年を記念して半蔵門の国立劇場で正月の3日からうたれていた公演も今日が最後の千穐楽です。

 

黙阿弥の「幻の名作」の2002年以来の再演でしたが、大詰第2場の「鎌倉佐助稲荷鳥居前」の小狐礼三の大立ち回りが凄かった。

いえ、演じた尾上菊之助が凄いんじゃなくて、国立劇場の大道具と大仕掛けと荒事(若い役者のアクロバット)と美術が素晴らしかった。

 

赤い鳥居さんを素材にして、これを上下左右に自由自在に大車輪のように回転させ、その鳥居の上で一糸乱れぬ立ち回りと&大追跡&大捕物の超絶的曲芸を次々に繰り広げる。

歌舞伎は天下の大見世物とは我ながらよくぞいうたもの。年の初めのエンターテインメントはこれでなくっちゃ。

 

そういえば去年の今頃も同じ尾上菊五郎の演出で「南総里見八犬伝」の天守閣を舞台にした大詰の壮絶バトルに出食わして、エンドルフィンを盛大に垂れ流したものだったが、今回も十二分に堪能したぞえ。

 

もしかすると、菊五郎って新春スペクタクル・プロデュースの名人かもしれないな。

恒例の手ぬぐい巻きをとり損ねたのは残念だけど、またひとつ冥途への良い土産を見せてもらいました。音羽屋さん、恩に着ますぜ。

 

 

 国立劇場の脇にある「光解体」いったい何をする会社なんだろう 蝶人

ジョエル・シュマッカー「セント・エルモス・ファイヤー」をみて

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.977

 

大学を卒業した7人の男女が、社会人になっても愛したり憎んだり、落ちこぼれのロブ・ロウを助けてやったりして青春を懐かしみながら延長させようと躍起になる「あの頃君は若かった」映画なりい。

 

彼らは映画の中ではしょちゅう「セントエルモのバー」でつるんでいるが、セント・エルモとは航海する船を遭難から光で守る聖人の仇名であるらしい。

 

  なんとなく先に逝く人が羨ましいそんな時代に生きてるわれら 蝶人