蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

バルザック著石井晴一訳「艶笑滑稽譚第一輯」を読んで

照る日曇る日第559回本書は、おふらんすの文豪バルザックが彼の生涯でもっとも力を入れた珍無類な世紀の奇書の第一弾である。かのフランソワ・ラブレーの顰に倣い、ヴェルヴィルをお手本として1832年に腕によりをかけてでっちあげたお洒落で愉快なおふざけポ…

アラン・バルガラ著「六〇年代ゴダール神話と現場」を読んで

照る日曇る日第558回&闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.374 題名の通り、この偉大な映像作家の一九六〇年代の作品についての製作過程と撮影現場の実態をくわしく掘り下げた七〇〇頁になんなんとする長編力作です。ゴダール研究家の著者は、冒頭の「勝…

溝口健二監督の「近松物語」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.373ともかく香川京子(おさん)が美しい。さまざまな映画に出演している香川京子であるが、これほど艶にしてきよらかな美しさを見せつけた映画はない。溝口の彼女への愛が、このような世界映画史に刻まれる永遠の美を…

吉村公三郎監督の「安城家の舞踏会」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.372新時代の到来にともなうある華族の没落と再生を一夜の華麗な舞踏会を舞台に描いた吉村公三郎と原節子の代表作です。あちこちで演出上の破綻は散見(例えば原の姉と元運転手の関係の急変についてちゃんと描かれてい…

ペーター・ノイマン指揮「モーツアルト・ミサ曲全集」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第291回1940年生まれのドイツの指揮者ペーター・ノイマンがコレギウム・カルトゥジアヌム、ケルン室内合唱団を率いて録音したモーツアルトのミサ曲全集です。すべていま流行のピリオド楽器による演奏ですが、どうしたことかまことに平板で…