蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

懐かしのBBをみる

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.957、958 ○ミシェル・ボワロン監督の「殿方ご免遊ばせ」をみて 原題は「パリ娘」。しかしただのパリ娘ではなく仏蘭西大統領のお転婆娘をブリジット・バルドーが演じ、大公のシャルル・ボワイエや夫のアンリ・ヴィダル…

イーストウッドの映画2本ずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.955、956 ○クリント・イーストウッド監督の「J・エドガー」をみて 俳優として成長したあのディカプリオ選手が、FBI長官のフーバーをいそいそと演じている。あと20年もしたら名優になるかもしれないな。 フーバー…

共和国について~これでも詩かよ第165番

ある晴れた日に第354回 ある朝、アベ独裁体制にドタマに来たイシバ地方創生相が突如逆上した。 ギャクジョー、アタマニキタジョー、アシタノジョー。 「どこへ行っても地方は全部死んでる。どんな田舎でも国が助けてくれることだけを期待している。オラッ…

林望謹訳「平家物語一」を読んで

照る日曇る日第834回 前著「源氏物語」の好評をうけて、いつのまにか「平家物語」の現代語訳が出ていたので一読しましたが、やはりこの人のは非常に分かりやすく読みやすい。 本巻では巻第一から第三までを扱っているが、なんというても冒頭の「祇園精舎…

ジョン・フランケンハイマー監督の「RONIN」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.954 1998年製作のアメリカ映画で、ロバート・デ・ニーロ、ジャン・レノが出演している。 冒頭と中ほどで、日本の武士の話、赤穂浪士の切腹の話が出てくるが、映画自体は謎のスーツケースを世界各国が奪い合うスパ…

加藤典洋著「戦後入門」を読んで

照る日曇る日第833回 刻一刻と変遷する「戦後」像を最終的に定義しようとする著者渾身の力作である。 これまでの著者の著述は、どちらかというと原理論の展開に論考の主力が注がれていた。輻輳する政治社会の問題点をそもそもの淵源に遡って独自の視点で…

歳末ごった煮ずら、ずら、ずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.951,952,953 ○ステイーブン・ダルドリー監督の「愛を読む人」をみて 「朗読者」の映画化だが、15歳の少年時代の役者と成人してからの役者が全然似ていない点を覗くとかなりうまくいったのではないだろうか。 しかし…

市川昆監督の「細雪」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.950 谷崎の原作に出てくる美しき女性たちの私のイメージは、この映画に出てくる俳優達とは全然違うので困ってしまう。いやこれは市川昆のセレクトだから別に困ることはないか。 市川はこの映画を名家の没落と残照とエ…

国立劇場で「東海道四谷怪談」をみて

茫洋物見遊山記第195回 忠臣蔵のインサイドストーリーの元祖で、憤死した塩冶判官の浪人、民谷伊右衛門がどんどん人殺しをしていって妻のお岩やらその他大勢の亡霊の恨みを買って自滅していく陰々滅滅のお噺であるが、いろんなお化けがあの手この手で登場…

河出版「日本文学全集第11巻」を読んで

照る日曇る日第832回 井原西鶴の「好色一代男」を島田雅彦、上田秋成の「雨月物語」を円城塔、山東京伝の「通言総籬」をいとうせいこう、為永春水の「春色梅児誉美」を島本理生がそれぞれ現代語に翻訳しているが、いずれも甲乙つけがたい名作の名翻訳であ…

ソニー盤「ブーレーズ指揮シェーンベルク作品集」全11枚組CDを聴いて

音楽千夜一夜第353回 このピエール・ブーレーズやアーノンクールが引退してクラシックの指揮界もついに神々の黄昏の時代に突入した感が深い。 あとは小賢しい商魂小僧どもが重箱の隅をつつき捲くるような新奇で珍奇な解釈と演奏を繰り広げて疲弊しきった…

ウォルフガング・ペーターゼンの3本をみる

○ウォルフガング・ペーターゼン監督の「U・ボート」 潜水艦ものに駄作なしといわれるが、これは役者も音楽もいいし、密室で終始緊迫感と共にドラマが展開する名作のひとつだろう。 駆逐艦の怒涛の機雷攻撃に耐えに耐え、九死に一生を得て帰還した母港であっ…

独グラモフォン盤「カルロ・マリア・ジュリーニの藝術」全16枚CDを聴いて 音楽千夜一夜第352回 カルロ・マリア・ジュリーニは青年・壮年期はそうでもなかったが、晩年どんどん演奏の速度が遅くなっていった。ロス・フィルやスカラ座フィルと入れたベ…

河出版日本文学全集「石牟礼道子」を読んで 照る日曇る日第830回 「苦界浄土」3部作には驚嘆させられたが、ここに収録されている「椿の海の記」、「水はみどろの宮」「西南役伝説抄」にはもっと驚かされた。 石牟礼道子という人はチッソと戦う不屈の闘士…

中公偽決定版「谷崎潤一郎全集第11巻」を読んで

照る日曇る日第831回 大正14年に新潮社から出版された「神と人との間」と、同年に改造社から刊行された「痴人の愛」などを収めている。 前者は、谷崎を思わせる「悪魔主義」の作家と元医師の主人公が、美女を巡って猛烈な争奪戦を展開し、作家を毒殺し…

鎌倉文学館にて「鎌倉文士・前夜とその時代」展をみて

茫洋物見遊山記第194回&鎌倉ちょっと不思議な物語第362回 同館が主宰する文学散歩に参加していながら、肝心の展覧会がまだだったので、快晴の午前にひとわたり見物してきました。 例によって川端康成とか久米正雄とか、里見弴とか高見順とか小林秀雄…

十二月の歌

これでも詩かよ第164番~ある晴れた日に 第353回 朝には、朝の歌をうたおう 昼には、昼の歌を 夕べには、夕べの歌を 真夜中には、真夜中の歌をうたおう 春には、春の歌をうたおう 夏には、夏の歌を 秋には、秋の歌を 十二月には、十二月の歌をうたおう…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧 正規版

ある晴れた日に第352回 「わたし、狡いんです。そんな立派な女じゃないんです」原節子は永遠に死なない おもざしを隠しつつ過ぎたりと妻はいう哀れなるかな昭和の大女優 鎌倉の十二所に住みし柿本さんの眼どんくまさんに似て限りなく優しい むごたらしく…

夢は第2の人生である 第29回 

西暦2015年卯月蝶人酔生夢死幾百夜 前線で戦う兵士たちは全員ワイヤレススピーカーを装着していたので、強力な敵軍に遭遇して奮闘苦戦する現場の状況が、ここ司令塔でも手に取るように分かったが、彼らはけっして「天皇陛下万歳」とか「お母さん!」とか…

Les Petits Riens ~三十五年もひと昔

蝶人五風十雨録第8回「十一月三十日」の巻&バガテル―そんな私のここだけの話op.220 1982年11月30日 火曜 子規を読む。後世に何事か残さざるべからずという気持ちになるね。神奈川県域自閉症児者親の会の運営について悩む。今朝台風で立ち往生す。 …

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その9

ある晴れた日に 第351回 一億を総活躍させるというその一億にどうか私を入れないでください 施設なる四十一歳の息子から「お父さん大好きですお」と電話が掛かる 格別に見たいとは思わない平成39年に建つと云う日本最高ビル なんとなく先に逝く人が羨ま…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その8

ある晴れた日に 第350回 いかがわしまがまがしくもうざったしカボチャ祭りに浮かれる人々 その昔「中の中」だと思っていたが流れ流れて下流老人 仕事無く蓄えは無く扶養者ありげにわれこそは下流老人 何を尋ねても「加齢、加齢」というげに医者とは楽な商…

なにゆえに第21回~西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第349回 なにゆえにトイレットペーパーをそんなに使うなと注意するの そういう児なんだからどんどん使わせたらいいじゃないか なにゆえに風呂の湯が汚れると文句いう 利用者ごとに取り替えたらいいじゃないか なにゆえに未来未来と叫んで…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第29回

西暦2015年霜月蝶人狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op.219 この頃私は、私の生命活動をば限りなく貴重なものと感じ、その微かなゆらぎさえもこよなく慈しんでいるのです。11/1 野党の議員125名が、連名で臨時国会の開催を要求したにも…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その7

ある晴れた日に 第349回 わが街の花は竜胆だというけれど市内のどこでも見たことがない 広辞苑は第4版があれば十分よと笑っておりし歌人ありきつつがなきや 一枚のポロシャツだけで人変わるたかがファッションされどファッション 家毎に三つの憂い窓閉ざ…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第348回 われもまた一匹の獣であるMGMのライオンとなりて吠えておれば 友ありて利他だ利他だと叫んでいたが今頃どこでどうしているか 北海道には棲息しないのになぜヤマトシジミ 家の中でくたばっておる文月尽 また朝日は昇る頭領を無…

十一月の歌

ある晴れた日に 第347回 朝から晩まで風が吹き ムクロジの葉っぱが落ちる 実も落ちる 太郎には太郎柿、次郎には次郎柿、 宮部みゆきには太郎次郎柿 ゲゲゲの鬼太郎には輝太郎たもれ 紫式部には西村早生柿、清少納言には高瀬柿 和泉式部には越前柿 熟熟熟…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その5

ある晴れた日に 第346回 屁理屈で捻くり回した歌詠んでいったいなにが楽しいんじゃ なにゆえに男性ダンサーのあそこはあんなに大きいいったい何が入ってるんだ なにゆえに数字の1をiと書くイッヒMozart電話も一番 セッテンバー紅葉が燃える歩道橋の上で君…

国立劇場で通し狂言「神霊矢口渡」をみて

茫洋物見遊山記第193回 あまりに書斎に座ったきりでは心身が腐ってしまうと危惧して寒さと雨を冒して半蔵門まで辿りつき、平賀源内作の「神霊矢口渡」全4幕を見物してきました。 近年では大詰めの「頓兵衛住屋」がよく単独で上演されるそうですが、今回…

原節子死す

そんな私のここだけの話op.215&鎌倉ちょっと不思議な物語第361回 原節子嬢が9月5日に95歳で亡くなっていたというニュースを聞いて、ああついに来るべきものが来た、という感慨に襲われた。このひとだけはいつまでも死なないのではないかとひそかに考…