蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その4

ある晴れた日に 第345回 瑠璃蜆また瑠璃蜆てふてふてふ瑠璃子と瑠璃男の瑠璃色ダンス 蝶よりも蛾を低く見るそのこころ人種差別のはじまりなるか 何気なくを何気視線を目線と平気で書く奴等とは今日を限りに絶好じゃなくて絶交 失せ物ありシャープの液晶テ…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その3

ある晴れた日に 第344回 午前零時銀座通りの真ん中で黄色いウンチが湯気を立ててる カバライキンカバライキンと叫んでる君も私もバイキン仲間 年に二度寺尾家にやってくる富山ナンバーの薬売りのおじさん 果樹園のてっぺんに立ち眺むれば西に富士山東に東…

中央公論新社の「決定版谷崎潤一郎全集」について

照る日曇る日第829回 げんざい中央公論新社の創業130周年記念事業として同社から刊行されている文豪谷崎潤一郎の最新版全集を毎号楽しみにしている今日この頃ですが、前からちょっと気になっていることをレポートしておきたいと思います。 谷崎の全集…

速報! 生誕100周年記念「柿本幸造 絵本原画展」in鎌倉のご案内

鎌倉ちょっと不思議な物語 第360回 鎌倉に55年間住んだ絵本作家、故柿本幸造さんの絵本原画展が開催されます。 誰もが知っている「どうぞのいす」や「じゃむじゃむどんくまさん」から隠れた名作まで、錦秋の3日間に限り、貴重な原画が勢ぞろいしていま…

三谷幸喜千選手をどう評価するか?

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.945&946 初期の映画はみな面白かったが、だんだん化けの皮がはがれてきたような気もする。 しかし才能はある人なので、来年の五郎丸、じゃなかった真田丸に期待してるずら。 ○三谷幸喜監督の「THE有頂天ホテル」をみ…

谷崎潤一郎著「谷崎潤一郎全集第17巻」を読んで

照る日曇る日第828回 この巻に収められたのは「蘆刈」、「春琴抄」、「陰翳礼讃」を含めた「摂陽随筆」、単行本未収録の「夏菊」他計2編などであるが、なんといっても「蘆刈」が圧倒的に素晴らしい。 著者自身を思わせる主人公が、ある日ふと思いついて…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その2

ある晴れた日に 第343回 ノアという箱車ボックスカーが走り去る選ばれし家族とプードル乗せて 要するにただの白い車じゃないかライムホワイトパールクリスタルシャインカラー 車などみな似たりよったりなれど買う人が無理矢理個性をつける 或る夜に大イノ…

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その1

ある晴れた日に 第342回 一冊の書物を遺しこの世から立ち去らんとする人の原稿を直す 目を閉じて髭を剃らるるわが息子大仏に似た顔となりけり ニッポンはアメリカと組んで中国を抑えつけようとしているわれら民草の頭越しに 何匹も犬や猫を飼う人を「犬猫…

戦争映画をみる

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.941、942、943、944 ○ケヴィン・マクドナルド監督の「第九軍団のワシ」をみて 英国に侵入したローマ軍第九軍団がワシの軍旗を奪われて全滅。その軍団長だった父親の敵を息子がうつ歴史戦争ものずら。 当時はイタリアが…

家族の肖像 その8~「これでも詩かよ」第161番

ある晴れた日に 第341回 「お母さん、輸血ってなに?」 「怪我をしたときに他の人の血を入れることよ」 「宇宙戦艦ヤマトの島大介さん、輸血したお」 「そうなの?」 「マコトさんとファミリーナの田中さん、好きだお」 「マコトさんってお父さんのこと?…

クラウディオ・アバドの独グラモフォン交響曲全集を聴いて

音楽千夜一夜第351回 ついこないだ亡くなったばかりの指揮者を偲んで全41枚のCDを聴いてみました。 収められているのは順番にモーツアルト、ハイドン、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス、ブルックナー、マーラーで一番多いのは彼がシェ…

デヴィッド・フランケル監督の「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.940 世界一だか日本一だか知らないがおバカどころかアホバカな犬は世界中、日本中にごろごろいるようだ。 隣のアホ犬などは朝の六時から無駄吠えをして、向こう三軒両隣のみならず町内の善男善女を叩き起こしているの…

秋の鎌倉文学散歩

茫洋物見遊山記第192回&「鎌倉ちょっと不思議な物語」第359回 鎌倉文学館の主催で年3回行われているこの催しですが、今回は「鎌倉文士の足跡」を辿るウオーキングでした。 というても行動半径は駅の周辺の近場ばかり。午前10時に裏駅の時計広場に…

保坂和志著「遠い触覚」を読んで

照る日曇る日第827回 この本をデビッド・リンチの映画「インランド・エンパイア」や「マルホランド・ドライブ」を見ながらの感想を綴ったエッセイだと云うたら、それはそうかもしれない。 あるいは小島信夫やカフカやベケットやランボオや聖アウグスティ…

鎌倉国宝館で「鎌倉震災史」展をみて

茫洋物見遊山記第191回&「鎌倉ちょっと不思議な物語」第358回 いつも仏像や御雛様の展示をしている国宝館が異色の展覧会を来る12月6日まで開催しています。題して「鎌倉震災史」。歴史地震と大正関東地震という副題がつけれれているとおり、当地に…

内田光子のシューベルト8枚組CDを聴いて

音楽千夜一夜第350回 一聴すればたちまち分かるように、これまでのどんなピアニストのどんな演奏とも鋭く一線を画する恐るべき音楽が鳴っている。 内田光子は死んだシューベルトの霊を呼び出し、彼になりかわって白鳥の歌をうたい、鎮魂の真心を捧げてい…

高橋源一郎選手独演会

「鎌倉ちょっと不思議な物語」第357回&バガテル-そんな私のここだけの話op.214 秋日和の昨日は、商工会議所で鎌倉文学館開館30周年記念の「鎌倉文士前夜とその時代」という講演会があり、高橋源一郎、館長の富岡幸一郎両氏の対談があった。 富岡と云…

偶には映画でもみようっと

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.937、938、939 ○パトリス・ルコント監督の「髪結いの亭主」をみて 相思相愛の一方の若妻が、年配の夫に性交を挑んだあと、激流に身を躍らせる。 もうこれ以上の至福の時はないだろうから、その絶頂で身を絶とうという…

「谷崎潤一郎全集第13巻」を読んで

照る日曇る日第826回 「潤一郎犯罪小説集」(「日本におけるクリツプン事件」、「或る罪の動機」「黒白」)、「卍(まんじ」を中心に、芥川龍之介の思い出噺などを交えたコンピレーションである。 谷崎の小説では、男は女への奉仕者であり、女たちはいき…

がんの歌~「これでも詩かよ」第162番

ある晴れた日に 第340回 川島なお美は、がんだった。 坂東三津五郎も、がんだった。 この国の、ふたりにひとりが、がんになる。 アンパンマンも、がんだった アンパン、ジャムパン、クリームパン 胃がん、肺がん、食道がん 乳がん、舌がん、子宮がん カレ…

Les Petits Riens ~三十五年もひと昔

蝶人五風十雨録第7回「十月三十日」の巻 1982年10月30日 土曜 午前中、裏庭の整理をする。日本シリーズ、4勝2敗で西武勝つ。 1983年10月30日 日曜 はれ 寒 みかん狩りなれど長男は行かぬと主張して行かぬ。妻は映画を何年振りかで観たり…

西暦2015年神無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第339回 お土産はすぐき八橋五色豆何回行っても京都旅行は 仙人草も薄も怨んでいるだろう草刈り爺さんに全部刈られて ハロウィンなるかぼちゃ祭りを持て囃す軽佻浮薄な日本人かな 死ね死ね死ね手前こそ死ね死ね死ね死ね今日も吠えてる平成…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第28回

西暦2015年神無月蝶人狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op.217 握った右手の強さを上回る力で握り返さない人間は本当の友ではない、と考えるマッチョなインテリが多いので驚く。 いかなる正論にも異論の余地はあり、反論の出来ない立論はな…

なにゆえに第20回~西暦2015年神無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第338回 なにゆえに毎日殺人事件が起こるのか毎日殺人を報道するので なにゆえに右肩右腕の激痛が治らぬ天は右翼を見放しつつあり なにゆえにいきなりリクエストだけ送るつけるなにか一言書きなさいよ なにゆえに夜ともなれば星を見上げる…

村上春樹著「職業としての小説家」を読んで 

照る日曇る日第825回 この本は著者が初めて書いた「自伝的なエッセイ」です。 いちおう小説家を志望する若者たちへの小規模な座談というスタイルをとっていますが、その中には著者がどのようにして突然小説を書こうと思い立ったのか、「ど素人」の青年が…

国立劇場で「通し狂言伊勢音頭恋寝刃」の千穐楽をみて

茫洋物見遊山記第190回 久しぶりの歌舞伎を息子と一緒に半蔵門で鑑賞いたしました。 演目は近松徳三の手になる「伊勢音頭恋寝刃」でこの劇場ではなんと53年振りの公演だそうです。 寛政8年5月、伊勢国古市の遊女屋」油屋で地元の医者、孫福斎が仕出か…

家族の肖像 その7~「これでも詩かよ」第160番

ある晴れた日に 第337回 「お父さん、虫歯の英語ってなあに? 「虫歯、虫歯の英語かあ、バッド・トゥースかな」 「バッドトース」 「そうじゃないよ。バッド・トゥース」 「バッド・トース」 「お母さん、よろしくお伝えください、ってなに?」 「ごきげ…

ジョー・ジョンストン監督の「オーシャン・オブ・ファイヤー」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.936 原題は「ビダルゴ」で、その名のアメリカの野生馬ムスタングにまたがった西部のカウボーイが愛馬ともども、なんとアラビアの大砂漠で大活躍するという血沸き肉躍る人馬一体の感動的な友愛物語です。 西部劇と「ア…

西部劇2本立ずら 

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.934、935 ○ジョン・フォード監督の「モホークの太鼓」をみて 1939年製作の「カラー」映画ずら。 西部開拓時代の若い夫婦、ヘンリー・フォンダとクローデット・コルベールが助け合いながら逞しく生き抜いていく愛と…

池澤夏樹編「河出版日本文学全集08」を読んで

照る日曇る日第824回 「日本霊異記」と「発心記」を伊藤比呂美、「今昔物語」を福永武彦、「宇治拾遺物語」を町田康が現代日本語にしているが、伊藤と町田のが断然面白い。 なるほど古典の翻訳は10年ごとにやり直せと言われるだけのことはあるなあ。 町…