ジョージ・クルーニー監督の「グッドナイト&グッドラック」をみて
闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.553
もう今では誰も関心もないだろうが、50年代前半のアメリカ政局に一世風靡して猛威を振るったのがマッカーシー上院議員だった。
この全篇モノクロのドキュメンタリー風の映画は、全米のメディアが沈黙する中、彼が主導する「なんでもかんでも反共キャンペーン」に異議を唱え、表現の自由を求めて敢然と立ち上がったCBSの報道番組「See it Now」のキャスター、エドワード・R・マローの不屈のジャーナリスト魂を生き生きと伝えて鮮烈な感動を呼ぶ。
なんといっても主役を演じるデヴィッド・ストラザーンが圧倒的にカッコいいが、じつは脇役に徹していたジョージ・クルーニーが、この反時代的インディーズ映画の監督脚本を担当していたとは知らなかった。
さいきん本邦でもじぶんの主体性の放棄を棚に上げてメディアの問題点をあげつらう人が多いが、「マッカーシーにあらずんば人にあらず」というくらいの反動旋風が荒れ狂った時代にあって、あくまでも事実に基づいて冷静に報道を続けたこうした先達の業績に謙虚に学んでほしいものである。
「See it Now」のエンディングで、マローが「Everybody, good night and good luck」と毎回締めたことにちなんだ題名もお洒落だ。
クルーニー、最高だぜ。
またしても午前二時半に鳴る非通知電話もしや丑の刻参りではあるまいか 蝶人