蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

よみがえるモーツアルトの精霊


音楽千夜一夜 第5回


いまパソコンでモーツアルトの「ミサ曲ハ短調K427」の演奏を聴いています。指揮は長老チャールズ・マッケラス、演奏はジ・エージ・オブ・エンライトメント・オーケストラ。
この夏英京ロンドンのアルバートホールで開催された「プロムス2006」でのライブの再放送ですが、これがまた途轍もなく素晴らしい。
  
私が普段聴いているこの曲はフリッチャイ&ベルリンRIAS響のグラムフオン録音ですが、これほど劇性は高くないものの、マッケラスはモーツアルト演奏には絶対に欠かせない“適正なテンポ”をきちんと守り、生気あふれる“モーツアルト魂”の流麗にして暖かなメロディーラインを心ゆくまで歌わせています。
この“モーツアルト魂”をちょっと頭がいいばっかりに考えすぎて圧殺している神経衰弱病のアーノンクールやラトルやマゼールや単細胞突貫小僧の小澤、バレンボイムムーティ、メータなどが、もう3回生まれなおして指揮者になったとしても到底達成できないだろう芸術の至高の境地、秘密の花園に遊ぶ仙人の演奏です。

マッケラスは日本人にはあまり人気がないようですが、彼がプラハのオーケストラと入れたモーツアルトの交響曲全集(米テラーク)や同じプラハの国立オペラとライブ収録した「ドンジョバンニ」のDVD(タワーで1890円!)などに接すると、その真価の一端が窺えると思います。