蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

スミレ咲く


鎌倉ちょっと不思議な物語35回

熊野神社ではもう可憐な山スミレが咲いていた。十二所の山際の崖ではたった1輪が薄紫の花弁を風に揺さぶられていた。

今年も暖冬らしい。十二所のガソリンスタンドで尋ねたら1.8リットル当たり1580円だそうだ。ひと頃よりだいぶ安くなってきたようだ。

さて今日は超くだらない話をしよう。(もっともいつもくだらない話なのだが…)

近くのガソリンスタンドには丘の上に住んでいる超多忙の有名人Mモンタ氏が給油にやってくることがある。そうしてこの男は、給油中、まるで歌舞伎の千両役者のようにかっこつけて、文字通りに見得を切っている。

するとその異様なポーズに気づいた近所のおばさんが、「あれ、あの人モンタじゃないの。え、ほんとうの本物?」」などといいながら近づいてくる。

するてーとくだんのモンタ氏は、やっとそのヒトラー&ムッソリーニ時代の男性塑像のような奇妙な姿勢を解除して、突如営業用のスマイルをにゅっと浮かべつつ、「奥さああん、僕にサインしてほしいのおお?」とかなんとか叫ぶのである。

売れっ子はつらいね。それにしても年が明けたというのに、どうしてこっちには仕事が回ってこないんだろ?