蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

笑々っていいとも

 

鎌倉ちょっと不思議な物語44回

鎌倉でも京都でも、電線はいたるところに張り巡らされ、電柱は勝手にそそりたち、おまけにアホバカ携帯会社がおんなじ地域に3本もU字型のアンテナ塔をおったてても誰も文句をいわない。

さすがの彼らも多少は気がひけるのか、昨日の朝日の夕刊によれば、アンテナを竹に偽装したり、付属機器収納庫を山小屋に変装させているそうだが、笑止千万。
そういう小手先の「偽装」自体が醜悪な発想である。

そういえば鎌倉の東口駅前に「笑々」という、名前からしていやらしい居酒屋がある。

私の目には、その看板とネオンサインがあまりにも下品で毒々しすぎるので、いつも目をつぶって通り過ぎていた。

ところが去年だかおととしだか、たまたまそいつをまともに見た瞬間に吐き気を覚えた。

景観のみならず人間の精神の平安を著しく撹乱するこの標識はもう許せんと思った。

それでとうとう思い余った末に、ネットでHPを検索して本部の広報室長に電話をかけてみた。

「あなたの会社のC.Iデザインは酷すぎる。これでは多くの消費者を敵に回す。倒産するかもしれない。それで私が鎌倉支店用にもっとお上品なデザインとロゴを考えてあげるからこの際差し替えてみないか」

と、抗議兼懇切丁寧な提案までしたのだが、その広報室長らしき人物は

「そういわれても私にはなんともきゃんとも。なにぶんきゃまくら以外にも全国にお店がありますので、全国日銀会議で検討して」

 云々と、のたまわっておったなあ……。

私は絶対に、死んでも、あんな店には入りたくない。