蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

格闘技化するコンサート会場


♪音楽千夜一夜 第15回 

今日は日曜日。いまNHKのFMでベルニーニの歌劇「清教徒」を放送しています。
今年の1月6日ニューヨークのメトロポリタン・オペラの公演で、指揮はパトリック・サマーズ、主役のエルヴィーラをいま話題のソプラノ、アンナ・ネトレプコが歌っていますがさっぱり面白くない。

指揮はかなり酷い。やはりメトはオペラの乗りを熟知しているジェームズ・レバインが振らないとダメ。それにいくら美貌か知らないがビジュアルの支援なしで聴くネトレプコの歌唱もあまり良くない。これからあの「狂乱の場」があるわけですが、果たしてうまく乗り切れるのか不安です。

ああ、それなのにメトの聴衆は拍手喝采してる。
でもあそこのお客はニューヨークフィルと同様ほとんどが観光客相手だし、NYのクラシック愛好家も耳がアバウト。なんでもかんでもわあわあきゃあきゃあブラボー!ブラボー!だ。 まあ勝手に騒いでろ。

ベルニーニなら、2、3年前に廉価版ブリリアントから出たオペラ10枚組の中の超ベテラン、リチャード・ボニング指揮ベリーニ劇場管弦楽団(イタリアの超ローカルオケ)の演奏のほうが何十倍も素晴らしい。

「ノルマ」こそ入ってないが、「夢遊病の女」「カピュレッティとモンティッチ」など全5作品が入って3600円とお買い得です。同じブリリアントからドニゼッッテイの10枚組みも出ています。

ところでNYはともかくとして、最近東京のクラシックファンが過激化しているらしいですぜ。いきなり他のお客に殴りかかったりするらしい。そんな低級な喧嘩騒ぎがしばしが起こるので、オーケストラは演奏どころじゃないんだって。おおこわ。ここでも世も末でげす。

なんでも隣の客がチラシをめくる物音や体臭などにいらだって暴力行為に及ぶんだそうです。確かに私もその気持ちは分る。演奏中に楽譜をめくるやつ、座席の下にもぐりこんで携帯に出るやつ、舞台の上のオケや指揮者の写真を撮るやつ、一緒に来たおばはん同士でぺちゃくちゃおしゃべりするやつ、安香水の匂いを撒き散らすやつ、お弁当を食べ始めるやつ、鼻でなく口で呼吸するのでフガフガたいそううるさいやつ、もうコンサートホールはあほばか基地外、吉外、気狂い、気違いばかりでござんす。

それが嫌さに私は東京でのコンサート通いをやめて10年以上たちまする。
でもそうか。嫌な奴をいきなりぶん殴り、髪の毛をつかんで引きずり回すという直接行動暴力委員会という手法があったのか。
そんならこれから私も完全武装して、火炎放射器で嫌な聴衆を退治しながら「夢遊病の女」でも聴こうかな。