蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

カフェー・オー・ジャルダン


遥かな昔、遠い所で第12回&勝手に建築観光19回&♪ある晴れた日に11回

馬場下にあった「カフェー・オー・ジャルダン」という奥に庭園があったガラス張りの喫茶店はすでにこぼたれ、まさしくその位置に天丼屋の「てんや」が建っていたのはいっそ小気味よくもあった。

ここには幾多の思い出があるが、それには触れず静かに立ち去ろう。夏でも肌寒くなるほどガンガン冷房する奇妙な店であった。

竜泉院を下って大学本部に向かう。

余はかつてこの小道を、りゅうとした着流し姿の風人先生が、雪駄を地面にこすり合わせ、ハラハラと扇子を使いながら、教育学部前を悠揚迫らず闊歩された日の驚きを余は忘れることができないのである。

されど今やその教育学部は建て替えられ、小路に田舎食堂「おふくろ」なく、重心に低い「茶房」すでになく、高橋義夫先生が愛用されたおんぼろ学生会館も見当たらない。そのかわりにかつて我々がその建設に反対したかの第二学生会館が大隈講堂と向かい合うようにして轟然と聳えていた。

こいつは当節のバカダ大学を象徴するように下品で愚劣な建物である。どこから眺めても風流や文化というものが微塵も感じられない。やはりぶっつぶしておくべきろくでもないビルジングであった。

♪反歌
身丈に余る絹の三色旗うちふるいドラクロアのごとかくめい目指せり
日米の佐藤談判阻止せむと死地に乗り入る我ら七人
屈強な右翼学生殴りこみし朝のピケットラインわが不在を許さず