蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

コーリン・デイビス80歳


♪音楽千夜一夜第26回&遥かな昔、遠い所で第20回

今日もロンドンで放送しているBBC3のライブをポッドキャスティングで聞いている。コーリン・デイビスが80歳になったのでそれを記念したライブやこれまでの演奏を紹介しているのである。白髪のコーリンがフィガロの第二幕とか幻想交響曲と、シベリウスなどのおはこを楽しそうに振っているのが目に見えるようだ。

幕間のインタビューで内田光子が、コーリンのモーツアルトへの愛を例によってとても興奮した口調で喋っていたが、そんなに大げさに褒めることもあるまい。コーリンはいつでも謹厳実直で温和で、しかしここぞというときには激しい精神の火花を散らす音楽家であり、今では数少なくなった古きよき時代の英国の紳士なのである。

私が彼の音楽をはじめて耳にしたのは今から30年以上も昔の東京文化会館で、来日したコーリンがブリテンの「ピーターグライムズ」とベルリオーズの大作「トロイ人」を指揮して、それが私の生まれて初めてのオペラと英仏音楽体験となったのだった。ピーターグライムズを熱演したジョン・ヴィカーズのあの逞しい体躯!

コーリンよ、どうかいつまでも長生きして彼独自の優美なモーツアルトのオペラを聞かせてほしい。