蝶人戯画録

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「ヒトラー最後の12日間」を観る


降っても照っても第71回

まずはブルーノ・ガンツの怪演に驚き、そのヒトラー以上のヒトラーさに俳優の業の凄まじさとえげつなさを覚える。

演技といえばゲッペルス夫妻の最後の姿に圧倒される。5人の女の子に睡眠剤を飲ませ、(実際にはもうひとり男の子がいたはずだがこの映画には出てこなかった)さらに青酸カリの液体を口唇に注ぎ込む悪鬼のような所業には思わず身の毛もよだつ。

ゲッペルスが出たからには我らがフルトヴェングラーもぜひ顔を出してほしいところだが、そのかわり?にヒトラーお気に入りの建築家のアルベルト・シュペーアが登場してくれる。 

シュペーアが国会議事堂を中心とした彼の世界首都ゲルマニア=ベルリン都市計画模型をヒトラーに見せると、この独裁者は、この壮大な建築物こそが、自らの死後も第三帝国の栄光について永遠に語るだろう、と奇怪な妄想にふける。そうしてその姿が、建築と権力者の関係を雄弁に物語るのである。

いずれにしても自国の歴史の恥部を深々と覗き込み、じっくりと正視する勇気を私たちももちたいものだ。

最後に、この映画を観ての私の感想は、「おいらも自殺用の拳銃が1挺欲しいよ」。