蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

春風の丘に立つ


車も化粧品もアパレルも、世界市場の使命を制するのはBRICsわけてもアジアのマーケットである。

昨日は2つの学校で私の今季のヒジョーキン生活が始まったが、韓国、中国、香港、台湾の学生の元気な表情が印象的だった。

日本人に元気がないとはいわない。日本がアジアの一員でないともいわない。しかし背後に自分自身の未来とくわえて国の将来を背負った彼らの勉学への精進を親しく見聞していると、なにかが微妙に違っていると感じないわけにはいかない。

彼らは外国語としての日本語を驚くほど速やかにマスターしてしまう。なかにはわが維新の時代の壮士を思わせる気概の持ち主もいる。成長期の世界と円熟期の世界とでは商品・サービスのみならず人材が輩出されるための土壌・環境がまるで違っているのであろう。

かつて毛沢東は、「青年は午前10時の太陽である」と言った。若いこと、無名であること、貧乏であること。これが革命者の条件である、とも言った。毛の誤謬や革命の功罪はさておき、前途有望な若者への激励の辞としてはまだ有効であろう。

それにしても若いということはいいことだ。どんな失敗もまだ許される。願わくは破綻や蹉跌を恐れず己の信ずる路をひたすらつき進んでいってほしいものだ。
午前10時ならぬ午後5時の残照に孤影漂うわたくしであるが、明日からは3つ目の学校へのお勤めも始まる。見えない未来に向かって疾走する人々にいささかの後押しをいたしたいものである。

最後に全国の学友諸君に対し、正岡子規の高弟であり、夏目漱石に「猫」を書かせて作家デビューを後押しした俳人の普段の写実の姿勢をかなぐり捨てた激句を捧げ、よってもって連帯の挨拶に代えたい。


春風や 闘志いだきて 丘に立つ  高浜虚子


♪鳶一羽われに愛する力あり 亡羊