蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

♪バガテルop70

 
きのう福田首相が突然辞任を表明した。彼は靖国神社に参拝しなかった一事をとっても、自民党のなかで数少ないましな政治家の1人であった。狂気のライオン丸や隠微阿部が退陣してようやく普通に凡庸な福田に代わったばかりだというのに、これからまたしても愛国男根主義者の麻生や政治芸者の小池なぞの魑魅魍魎が登場するのかと思うとぞっとする。1日も早く総選挙を行ってこの稀有の2重権力状態を解消するか、それとも継続するかを決定することがのぞまれる。

ところで、私はニヒリストなので政治に多くを求めすぎたり、政治に安易に夢や理想やロマンを結びつけたりする人たちにはあまり心を動かされない。そのこと自体が政治を本来の役割から逸脱させ変質させる危険があるからだ。また超保守主義者の私は、凡庸な国民にふさわしい凡庸な公僕がまあまあそこそこの政治をもの静かに行って市民の自由を侵害しないようにしてくれるのを好む。政治には指導性が必要だなどとむやみに呼号する人物は眉に唾して冷静に見つめる必要があるだろう。

いずれにしてもこれから私たちは21世紀の長い長い坂道を下っていかなければならない。それは大きな苦痛と犠牲をともなう後退戦である。史上最大の痛苦な作戦である。1億2600万人をいかに無事故かつ安全に麓まで下ろすことができるか。それがわが国の政治家、ではなくて私たちひとりひとりの腕の見せ所だろう。

2月に母親が行方不明になった家
 夏空に
洗濯物が揺れている 茫洋