蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

孫の言葉『おじいちゃん』第2回


ある丹波の家族の物語 その7 ♪遥かな昔、遠い所で第80回


一二月二九日 おてつだい

 おじいちゃんは、はき物店をしていて、毎日げたをすげていました。

わたしが「げたのうしろのシールをはる。」と言って、シールのカンをとって中のシールを出しました。

シールには「てらこ」と書いてあります。お店の名前が「てらこはき物店」だからです。

できあがったげたへどんどんはっていきました。

はりおわって、たいへんな仕事やなと思いました。


小学四年生、夏休みの日記から
八月三日 ほたるがり

きのうの夜、おじいちゃんとほたるがりに行きました。

川の近くに一ぴきいました。

「ほら、あれがほたるだよ。」とおじいちゃんが言いました。

わたしは生れてはじめてみました。

「本当、きれいね。星みたい。」
わたしは空の星とほたるを見くらべました。

おじいちゃんが、「つかまえられないから帰ろうか。」

「うん。」と言って帰ろうとしたら、もう一ぴきいました。


♪耕君はいま昼食を喰らいつつ今晩のメニューを尋ねる大谷崎に似たり我が家の長男 茫洋