蝶人戯画録

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佐々木健“Score”展を見る


照る日曇る日第185回

曇天を冒して2つの展覧会を見た。ひとつは東京新宿区西落合の「ギャラリー・カウンタック」で今月15日土曜日まで開催されている佐々木健“Score”展である。

スコアというからすべて音楽や音符にちなんだコレクションかと思ったのだが、さにあらず。芽吹いたジャガイモやらカラフルな毛糸のセーターを着せられた可愛いブルドックなどもそこここに配置され、作者のたくまざるヒューモアをさりげなく体感させてくれる。

もちろんドラムス、ベース、アンプなどの楽器やドライバーなどの道具や機材もたくさん描かれていて、それらはほんらいは無機的な物たちなのだが、じっと見つめているとあたかも生命あるもののごとく陰微におののきはじめるような気がしてくるから不思議であり、やや不気味でもある。

私たちの日常にありふれたモノを凝視する作者のまなざしがそのモノをくしざしにするとき、モノはモノならざるものに変容し、なにやらなつかしい言葉を発しているようにも思える。作者はかつて無機を有機と化そうとしたアール・ヌーボーをば、この平成の御代に再来させようと試みたのであろうか。

http://gallery-countach.com/contents/exhibition/exhibition_frame.htm

なお今回の作品の一部は11月28(金)、29(土)日の2日間横浜市西区のみなとみらいで開催される「横浜アート&ホームコレクション」の三菱地所ホーム×Gallery Countachのコーナーでも見ることができる。

http://www.yaf.or.jp/yahc/#wrapper

もうひとつは閉幕間際の「大琳派展」。琳派関連は最近ものすごく増えたので、あまり期待しないで行ったのだが、質量とも最大規模の素晴らしいコレクション。光悦、宗達、光琳、乾山、抱一、其一ときて、やはり図抜けて、神がかって、偉大なのは俵屋宗達。その作品をこんなにどっさり見せてくれるなんて、ありがたや、ありがたや。これで死に土産ができました。

風神雷神図屏風」もさることながら「源氏物語図」、「伊勢物語図」、そしてきわめつけは若冲をはるかに凌駕するシュールな「白象図・唐獅子図杉戸」(京都・養源院蔵)。神韻縹渺とはこの人のためにある言葉だろう。