蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

歳末クラシックCD談義 後篇


♪音楽千夜一夜第54回

シフのバッハ12枚組は最高で、後期シューベルトもとても良かったのです。昔聴いたケンプのシューベルトも後期のピアノソナタも素晴らしかったので、この際全曲を聴こうと思って7枚組全集4590円を買ったついでに、ブレンデルの7枚組をなんの期待もせずに3789円で買いましたら、これが定評あるケンプよりもはるかに素晴らしかったのは意外でした。

最近引退したばかりのこの人のモーツアルトは、ヴォックス録音以来(最近独ブリリアントから超安価で全集が出た)さんざん聴いて満足していたのですが、シューベルトはヴェートーベンよりず抜けて良かった。こんなことなら内田光子の問題作も併せて買って聴き比べておけばよかったと後悔しています。あれは確か8枚組で5500円だったっけ。

タワーで仏united archivesが廃盤になるというのでさよならバーゲンしていたので、ブダペストSQの50年代ライブ録音によるヴェートーベンSQ全集8枚組を2690円、モーツアルトの最後のプロシア王SQ2枚組を1590円で衝動買い。ヴェートーベンは米コロンビアの40年代録音を持っているが、そちらの演奏の方がやや充実しているような気がします。プロシア王は未聴。

バーンスタインのヴェートーベン交響曲全集とモーツアルトの後期交響曲&レクイエム&ミサ曲集6枚組が(当然のことながら)とても良かったので、最晩年のニューヨーク・フィルとのチャイコフスキー後期交響曲集4枚組2590円を聴いたら、これまた6番の「悲愴」が血わき肉おどる名演で満足。くたばれカルタゴ&小澤&カラヤン

名門ニューヨーク・フィルといえば、アンドロメダ盤から出たブルーノ・ワルター指揮のモーツアルトの後期交響曲集が秀逸。選ぶならステレオのコロンビア盤よりもむしろこちらか。しかしモーツアルトの交響曲全集なら、墺ならぬ豪州出身のさすらいの棒振り男チャールズ・マッケラス卿がプラハ室内響と入れたテラーク盤10枚組の高い完成度には及ばない。かのバルリン&ベーム翁も追い越して、数ある演奏のなかで現在の私のベストです。

♪奏者全員死者のミサ曲聴けば冥界より手招きさるる心地して 茫洋