蝶人戯画録

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鎌倉時代の女性と男性 十二所の歴史と宗教 その3


鎌倉ちょっと不思議な物語第164回


鎌倉時代の民衆の平均寿命はおしなべて五〇歳くらいで比較的長命であった。

女性は一六歳で結婚し、二〇歳になればおばあちゃんとなるが、いちばんたいへんな仕事は洗濯だったであろう。

当時の衣服の大半が麻や楮の素材であったが、これを洗うとゴワゴワに膨れ上がって手で洗うのが非常にやっかいであった。(軍隊に行った男性ならお分かりだろう)

しかし鎌倉時代の女性は、けっして男性に負けてはいなかった。

商業のアルバイトで小金を貯めて、貧乏人の亭主に二か月48%の高利で貸し付けていたことが古文書で裏付けられている。また甲斐性のない亭主を二足三文で売り飛ばした剛の者もいた。結婚に際して夫の候補者を面接していたという話もある。

「夫婦は縁友」という言葉が平家物語でただ一か所だけ出てくるが、この言葉のうちに現代にも通じる合理的で法律契約的な関係性を読み取ることもできるのではないだろうか。


などと鎌倉国宝館の館長は滔々と語られたのであったが、私は用事があったので後半の茶話会をパスして辞去したのであった。


いつも物見の上にいる鷹のやうに 茫洋