蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ジョン・ウー監督「M:I−2」を見ながら


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.18


トム・クルーズ主演の「ミッション・インポシブル」の第2弾ですが、ちゃんとそのように表示しろ。原題は「MISSION:IMPOSSIBLE2」なのに「M:1=2」なんて判じ物じゃ。身内だけで通用している訳のわからぬタイトルを勝手なつけるな!

と観る前から怒り狂っていた私ですが、トム・クルーズの崖登りやカーアクションにはびっくり。スタントマンなしでやっていたとすれば立派なものです。

今回のクルーズ選手の使命は、悪人ダグレイ・スコットから最悪の殺人ウイルスとその治療薬を奪還すること。ところがクルーズが相棒のヒロインタンディ・ニュートンに本気で惚れてしまい、そのヒロインが元恋人の悪人の人質になってしまったために恋と仕事がひとつにからんだ鳴り物入りの追跡劇がスリルとサスペンスもどっちゃりと2時間にわたって繰り広げられるわけです。

トム・クルーズが監督に呼び寄せた「バイオレンスの詩人」なぞと称される香港ヤサグレ派のジョン・ウーが、バイオレンスシーンの撮影なぞにそこそこ手腕を発揮していますが、なに往年の巨匠サム・ペキンパーに比べれば児戯に等しい演出に過ぎません。
またせっかくアンソニー・ホプキンスを起用しながらこれが善人役とは。ヒロイン役タンディ・ニュートンの魅力のなさと相俟って、壺を心得たキャスティングとは程遠いもの。ラストのしらけるようなエンディングもとってつけたような代物と言わざるを得ません。


♪男たちの挽歌どころか己の挽歌を歌うのか疲弊したジョン・ウーよ 茫洋