蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

花盗人

kawaiimuku2009-11-28



バガテルop115

青白い花が近所の草むらに咲いていました。

とても珍しい可憐な花です。私が写真を撮っていると、通りがかりのハイカーも数人立ち止まり、

トリカブトに似ていますね」
「いや、あれは夏の花だからね」
「それでは、いったい何の花でしょう?」
「らんらんランラン蘭の花? あなたのお名前なんていうの?」

なぞと喃喃喋喋、丁丁発止と楽しくおしゃべりしたのが昨日の午後のこと。

 今朝早速もう一度撮影しようと現場を訪れましたら、影も形もありません。

気をつけてよくよく探してみたら、花があったと思しきあたりに、ぽっかり開いた黒土の穴。一昼夜の間に花盗人が鼠小僧のやうにやってきたのでせう。

無残に花を散らし、風と共に去りぬ。油断も隙もあったものではないわいな。

どうにも風流を解さぬ世の中になり果てたものです。


♪仁義なき花盗人を憎みけり 茫洋