蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第1部うつろい 第35回


bowyow megalomania theater vol.1


10月15日 雨

僕は、横浜線のことを考えています。それでお父さんに尋ねました。

お父さんはきのう僕を怒ったので反省して、今日は僕にやさしくしようと努力しているので、それが分かっている僕はお父さんに協力してあげようと思ったのです。

「いま横浜線、新しい?」

「新しいよ。JR東日本の横浜線は、新しいジェラルミン車だよ。質問はそれで終わり?」

「それでおしまいです」

僕はしばらくしてから「レコード芸術」を読んでいるお父さんにまた質問しました。

「横浜線はどこからどこまで走ってるの?」

「えーと、大船から八王子だよ」

「横浜線、新型だけ走ってるの?」

「うん、そうだよ。岳君、横浜線好き?」

「大好き」

「じゃあ横浜線の新型と旧型とどっちが好き?」

「両方好きです」

「ほんとう?」

「ほんとうです」

「新型と旧型とどこが似てるの?」

「黄色いのが」

「どこが黄色いの?」

「ここが黄色いの」
と言いながら僕は胸を指差しました。


♪電池寿命測定器の寿命も電池が支えているんだ 茫洋