蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

由比ヶ浜海水浴場にて


バガテルop128&鎌倉ちょっと不思議な物語223回

今日も朝から猛烈な暑さです。午後の遅い時間に、例によって家族3人で、今年3回目の海水浴に出かけました。

由比ヶ浜の海岸には黄色い旗が立っていました。それほど波が高くないのにどうしてだろうと思っていたら、中央監視所からアナウンスがありました。
「今日は雷警戒警報が出ているので遊泳注意になっています。あまり沖には出ないようにしてください。それから海岸では決まった場所以外での喫煙はやめましょう」

そういえば今年の4月から神奈川県の喫煙条例が施行されたので、こういう放送をしているのでしょう。従来から海岸でプカプカ煙草を飲む連中には頭に来ていたので、この規制は大賛成ですが、ライフガードの人たちは例年にも増して大忙し。去年は大波で若い学生を溺死させたのですが、今年は海に加えて陸地でも目を光らせなければならなくなりました。

私たちはいつものようにライフガードの人たちがたむろしている監視所のすぐそばに陣取りました。これなら泳げない息子が浮輪で遠くまで行ってもすぐに助けてもらえます。

息子はもうとっくに星条旗のデザインの派手な浮輪に乗って波間にゆらゆら浮かんでいます。私も海に入りました。先日の花火大会のせいでしょうか、海水が濁って少しゴミがういています。(花火大会の後にはトラック何台分もの物凄いゴミが出て、毎年市の職員やボランテイアが総動員で片付けるのですが、大変な重労働だそうです。)

しばらく進むと次第にきれいになって中指くらいの大きさの魚がたくさん気持ちよさそうに泳いでいます。これを佃煮にしたらさぞやおいしいだろう、と思って両手ですくおうとしたのですがそうは簡単に問屋が卸さないのでした。

辺りを見回すと男女のカップルと家族連れが半々くらいでしょうか。みんな思い思いに楽しく遊んでいます。今からざっと700年前の和田の合戦で討ち死にした若武者たちの骨がおよそ5メートルの深さに眠っている砂浜の上では、褐色の肌の筋骨たくましいアフリカ人の青年が若い女性にフランス語で声を掛け、あちらではいかにも色男風のイタリア人が長身のモデル風の日本人女性を英語でくどいていますが、これまたそうは簡単になびいてはくれないのは北条氏の陰謀に斃れた武士達の怨念ゆえであることを、彼らは永久に理解できないでしょう。

私が海水浴に来るのは海で泳ぎ、瞑想にふけるためです。太古私の祖先が生まれた海に肌近く接し、海と風の声を聴きながら過ぎた過去を悔み、静かに物思いにふけるためですが、その大いなるさまたげになるのが海の家からの騒音。DJだかあほだらミュージックだか知らないがアルコールをあおりながら傍若無人に踊って叫んで騒音をまき散らして喜んでいる破廉恥漢々はどこか無人の山奥か都会のビルの地下室に直行してほしいものです。

♪佃煮にして食べたき魚泳ぎけり 茫洋