蝶人戯画録

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梅原猛著「親鸞と世阿弥」を読んで


照る日曇る日 第414回

標題による最新の論文をまとめて読めるのかと期待したが、そうではなく、著者が東京・中日新聞に連載中の「思うままに」という週1回のエッセイの2007年から10年8月分をまとめた本であった。親鸞世阿弥も同じような内容の書物を別の出版物で読めるので、あえてこんなまあ雑文集に目を晒す必要はないであろう。

それでも「教行信証」に見られる強烈な悪の自覚は、親鸞の母親が親殺しの源義朝の娘であることに因って来たっているとか、天台宗真言宗を綜合した天台本覚論の「草木国土悉皆皆成仏」という思想は、先進国中国からの直輸入ではなく日本固有のオリジナルな思想である、などの指摘は、論証のきめは相当に荒いとはいえはなはだ興味深いものがある。

「太陽」が万物の創造主であるという視点を欠落したために腐敗堕落して完全に行き詰まった西欧のギリシア=キリスト教哲学を、太陽神ラーとアマテラス神話を導入した新しい哲学で革新し、化石燃料で行き詰まった環境問題を新しい太陽光発電で大転換せよという勇ましい提案などは笑って読み飛ばすとしても。


草木国土悉皆成仏東北大地震諸霊祈願成仏 茫洋