蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第3回

bowyow megalomania theater vol.1


12月2日 雨のち雪

昨夜またお母さんの夢を見ました。お父さんと弟の純ちゃんと犬のムクも一緒でした。お父さんは、
「おーい、岳どこにいるんだ。もう怒っていないから。早く帰ってこい。早く帰って来るんだ」
とおっかない顔をして言いました。

お母さんと純ちゃんはなにも言いませんでした。ムクもなにも言いませんでした。なにも言わなかったけれど、お手をしました。右手ばっかりでお手をしました。

しばらくして夢がさめました。僕は独りでした。いや僕の隣にはのぶいっちゃんと洋子がいます。いつも3人は一緒です。これからはいつまでも3人で仲良く暮らすんだと誓い合いました。

そしてのぶいっちゃんは、小指の先をナイフでちょっと傷つけて、
「お前たちもこうしろよ」
と言って、いやがる洋子と僕にも無理矢理ナイフで傷をつけ、出てきた血をお互いになめあってきょうだいじんぎの誓いを交わし合いました。
これでもう3人はけっして別れられません。

お父さん、お母さん、純ちゃん、ムクも、そんな僕たちのことをどうか分かってください。僕たちは、もうあなたたちとは違う道を歩もうとしているのです。



祖父に巻いてもらいしゲートルの柔らかきこと 蝶人