蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ヤンソンス指揮・ウイーンフィル・ニューイヤーコンサートを視聴して

♪音楽千夜一夜 第239回


2012年の指揮棒を振るのはマリス・ヤンソンス選手。2006年に続く2回目の登場ですが今年の演奏はまことに聴きごたえがありました。前半はそれほどでもなかったが休憩後の「ピッチカート・ポルカ」は息を呑むような名演で、手あかにまみれたこの曲がこれほど新鮮に聴こえたことは一度もなかった。ついで「ペルシャ行進曲」の奇想、「うわごと」「雷鳴と電光」の動的精気、「チック・タック・ポルカ」の喜悦、そして「美しく青きドナウ」の淡麗優美までおもわず膝を正して聞きいるほどの素晴らしい名演の数々。
これまでメスト、小澤、メータ、マゼールバレンボイムアーノンクールなどの凡演に接してきたこのロバの耳が久しぶりにヒヒンと鳴いてよろこぶカラヤンクライバー以来のウインナワルツの歴史的名演奏でした。

テレビの画面で見る限りちょっとやせ過ぎではないかと案じられましたがまだ68歳、バイエルン放響、ロイヤルコンセルトヘボウのシェフを務め、当代随一、現存指揮者世界最高のマエストロの治世は、これからも当分つづくのでしょう。


二晩も塩見洋一の夢を見たり どうしているか塩見君 蝶人