蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

NHKミュージック・ポートレート「山本耀司×高橋幸宏」を見て

kawaiimuku2012-06-10



バガテルop155&音楽千夜一夜 第263回&ふぁっちょん幻論第70回

老境を迎え最後の後退線を懸命に戦う山本耀司の人世の応援歌は、中島みゆきの「ヘッドライト、テールライト」の「旅はまだ終わらない」というルフランであり、彼が人世の最期に聴きたい曲は、中島みゆきの「愛だけを残せ」だと言いながらいつのまにか涙目になっている無惨というも愚かな姿を見た私は、思わず目頭が熱くなるのを覚えた。

若き日の革命的な成功は徒遠い日の打ち上げ花火と去り、老残の身に襲いかかるのは破綻した事業と華麗なキャリアのおとしまえ。耀司はいま栄光に包まれた己の過去を振り返り、「僕はこれまで誰か一人でも幸せにすることができただろうか?」と呟くと、相方の高橋幸宏も涙ぐんで言葉も無い。

「愛だけを残せ 壊れない愛を 激流のような時代の中で 名さえも残さず 生命の証に 愛だけを残せ」と中島みゆきの唄は耀司を励ますのだが、耀司は「鏡に向かって笑ってみたら 男の抜け殻が写ってた」といつのまにか年老いた少年のように、平成の浦島太郎のように、悲しく頬笑むのだった。


犯人は捕まらなくても構わない防犯カメラは即止めるべし 蝶人

日本全国防犯カメラ基本的人権肖像権ゼロ 蝶人